米国フロリダ州マイアミは不思議な場所だ――。多くのキューバ系アメリカ人が住むこの街は、カリブ海、サウスビーチ、ビキニ、ローラースケート、ヤシの木等々、ひたする明るいイメージがある一方、悪魔や魔術に関する事件がやたらと多い。
地元紙の「サラソータ・トリビューン」紙によれば、1974年マイアミ最大の総合病院・ジャクソン記念病院では、月に700件の悪魔憑きの患者を扱った記録が残されているという。
■謎すぎる集団ヒステリー
マイアミのハイチ系はブードゥー教を、バハマ系の人々はオベア(奴隷にされた西アフリカ人の間で使われた霊的儀式)を先祖から受け継いできた。そして1970年代、これらのアフリカ系宗教は、アメリカの精神主義と混ざり合い、ウィジャボード(交霊術に使う文字盤)に人気が集まった。
1979年のハロウィーンウィークに突入した頃、マイアミの911コール(緊急通報)は、リトルハバナ地区にある私立学校「マイアミ・エアロスペース・アカデミー」から通報を受けた。
これが1979年10月25日に起きた、「アメリカの教育史の中で最も奇妙な事件の1つ」といわれた出来事の始まりであった。
学校創設者のエヴァリスト・マリーナ校長は、ハバナ生まれのキューバ人で、優秀かつ非常に野心的な人物であった。当時の生徒で現在59歳になるジョゼフ・ウルフ氏は、マリーナ校長を「ドナルド・トランプ」に例える。彼は、いずれマイアミ市長になることを目指し、さまざまな公職に立候補して、政治活動に力を注いでいた。
マリーナ氏は自分の学校を、「マイアミ・エアロスペース・アカデミー」と名付けた。
マリーナ校長は、学校のシンボルとして中古の飛行機を購入し、学校を全寮制の空軍予備士官校のようにしようと計画していた。彼は教師を「大佐」と「少佐」、学生を「士官候補生」と呼び、生徒たちには空軍の青いユニフォームを着せた。
マリーナ氏の信念は、共産主義、麻薬、そして同性愛の撲滅で、彼は「不道徳な行動」をしている生徒がいないかどうか、15分ごとにトイレを見回らせ、教室に隠しマイクを仕掛けているという噂さえあった。