そのため炭素同士が共有結合する場合には、電子対が2つ(電子4個)の二重結合や、電子対が3つ(電子6個)の三重結合などを作ることができます。

有機分子などで炭素が「骨格」と言われているのは、炭素が4対という多数の結合を作れるからだと言えます。

温室効果ガスの代表例として知られる二酸化炭素(CO2)では炭素Cを中心にして左右で酸素Oとの二重共有結合が起きており「O::C::O」あるいは「O=C=O」の状態で存在します。

このように共有結合とは原子と原子の間に「2個で1セット」となる電子の対を作ることで形成されます。

しかし今からおよそ100年前の1931年、ノーベル化学賞受賞者であるポーリングは電子2個ではなく電子1個の共有結合「1電子結合」の概念を提唱しました。

実際、プラスに帯電したH •+(カチオンラジカル)では、水素分子「H:H」から間にある電子が1つ取り除かれていると考えられています。

他にもいくつかの先進的な研究では電子1個の共有結合について同定したとの報告がなされています。

しかし1電子結合は非常に弱い結合であり、それだけを集めて単離することはかなり困難でした。

特に炭素同士の間での1電子結合については結晶学的な証拠が全くありません。

しかし今回、北海道大学の研究者たちは、あえてその困難に挑みました。

研究者たちはどうやって炭素間の1電子結合をみつけたのでしょうか?

電子1個の共有結合は結合距離が異常に長かった

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炭素間の結合数が多いほど原子間の距離が近づきます/Credit:Canva

どうやって電子1個の共有結合(1電子結合)をみつけたのか?

研究者たちはまず観測に使用する化合物にこだわりました。

共有結合に使用される電子が増えて、単結合(電子2個)、二重結合(電子4個)、三重結合(電子6個)となると、炭素間の距離が1.54Å、1.34Å、1.20Åと縮まることが知られています。