本稿は、アフリカビジネスパートナーズによる寄稿記事である。同社は、ケニアや南アフリカに現地法人を持ち、アフリカ40か国で新規事業立ち上げやスタートアップ投資に関する支援を提供している。現地のビジネス最前線を知る同社独自の視点から、投資家が注目するべきアフリカのスタートアップトレンドを毎月ピックアップして紹介していく。
前々号、前号と2回にわたってアグリテックにフォーカスをあててをとりあげてきた。今号では、アフリカの農業スタートアップのもうひとつの注目領域である、精密農業を取り上げる。アフリカでは平均を目安とした従来型の農業が主流であるものの、昨今、農地や農産物の状況をAIなどのテクノロジーを用いて精緻に観察、制御する手法が生まれつつあるのだ。
ドローンや衛星画像、AIを用いて農作業を効率化
南アフリカのAeroboticsは、果樹園向けにドローンやAIを用いた栽培支援サービスを提供している。ドローンで撮影した画像をAIで分析することにより、樹木の健康状態や病害虫の被害が把握できるほか、灌漑が不均一なエリアを特定して灌漑機器のメンテナンスを効率化したり、区画や品種ごとの樹木の数を正確にカウントして植え替えのタイミングを最適化したり、収穫量を予測することが可能になる。
また農薬を使わない害虫対策として、害虫の天敵昆虫をドローンに積み込み、空中から散布するサービスも提供している。ドローン1台あたり1日最大200ヘクタールに昆虫を散布することが可能で、これは手作業と比べて25倍速いスピードである。散布を行うごとに、農園のどの区画にどの昆虫を散布したかをアプリ上で可視化し、詳細なレポートを作成している。
Aeroboticsは2014年の創業以来、シードラウンドで60万ドル、シリーズAラウンドで400万ドル、シリーズBラウンドで1,650万ドルを調達している。
アフリカの果樹園向けに事業を展開するイスラエルのSupPlantは、幹や果実および葉に直接取り付けたり、土壌に埋めたりするセンサーを使って、幹の太さや果実の大きさの変化、葉の温度、土壌の水分量といったデータを収集する技術を活用したサービスを展開している。収集したデータをAI搭載のソフトウェアで分析することで、農家が最適なタイミングで収穫を行ったり、樹木のストレス症状を検知して対策を講じたり、適切な方法で灌漑農業を行うためのアドバイスを提供する。