ヒンドゥー教では、宇宙の調和を維持するために神々と悪魔(アスラ)の対立が描かれている。アスラは、神々(デーヴァ)に対抗する存在として、しばしば悪の象徴とされているが、完全に悪い存在ではなく、神々とアスラの戦いは宇宙のバランスを維持するためであり、善と悪の絶対的な対立よりも、宇宙的秩序(ダルマ)の維持を重視している。

参考までに、ゾロアスター教は、善と悪の二元論的な世界観を持つ古代宗教だ。アフラ・マズダーという善の神と、アーリマンという悪の神が対立している。アーリマンは悪と混乱の象徴であり、人類を破壊しようとしている。ゾロアスター教では、アフラ・マズダーが最終的に勝利し、アーリマンは滅ぼされるとされている。

フランシスコ教皇は「悪魔は君より頭がいい」と述べたことがある。ドイツの文豪ゲーテはその作品「ファウスト」で、メフィストフェレスを通じて「悪魔は決して眠らず、人間の弱さを巧みに利用し、常に誘惑の手を伸ばす存在」として描いている。私たちは、人間より利口で眠らず誘惑する悪魔と対峙しているわけだ。なお、ドイツ人哲学者ニーチェは「悪魔と戦う者は、その過程で自らが悪魔と化さぬよう気をつけよ」と警告を発している。

<参考資料>

「悪魔(サタン)の存在」2006年10月31日 「バチカンと『悪魔』の関係について」2014年7月7日 「ローマ法王『悪魔は君より頭がいい』」2017年12月15日 「悪魔『私は存在しない』」2021年6月23日

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年9月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。