ローマ・カトリック教会の最高指導者フランシスコ教皇は今月25日、慣例の一般謁見で信者たちに「悪魔を単なる集団的無意識の象徴や比喩と考えることは間違っている。多くの人々が悪魔は実際には存在しないと信じていることは奇妙な現象だ」と述べ、「悪魔の最大のトリックは、自分が存在しないと人々に信じ込ませることだと書いていた人(シャルル・ボードレール)がいた。私たちの技術化され、世俗化された世界には、魔術師、オカルト信者、霊媒師、占星術師、魔法やお守りの売人、そして残念ながら本物の悪魔崇拝のセクトが溢れている」と指摘し、悪魔に注意を呼び掛けている。

ギュスターヴ・ドレによるジョン・ミルトンの「失楽園」の挿絵、「地球へ向かうサタンを描いている」 Wikipediaより

南米出身の教皇は一般謁見の場や説教で頻繁に「悪魔」について語るローマ教皇だといわれてきた。ただし、ヨハネ・パウロ2世とは違い、フランシスコ教皇自身はエクソシストではない。ちなみに、2014年4月27日に列聖したヨハネ・パウロ2世(在位1978~2005年)は悪魔について、「悪魔は擬人化した悪」と規定し、「悪魔の影響は今日でも見られるが、キリスト者は悪魔を恐れる必要はない。しかし、悪魔から完全に解放されるためには、時(最後の審判)の到来を待たなければならない。それまでは悪魔に勝利したイエスを信じ、それを慰めとしなければならない」と語っている。

フランシスコ教皇は「悪魔は扉から追い出されても窓から再び入り込んでくる。信仰によって追い出されると、迷信と共に戻ってくる」と、悪魔の動きを比喩的に説明している。いずれにしても、ヨハネ・パウロ2世やフランシスコ教皇にとって、悪魔の存在は生きている人間と同じように存在しているわけだ。

フランシスコ教皇によれば、悪魔の存在に対する最も強力な証拠は、罪人や憑依された者ではなく、聖人に見られるという。すべての偉大な聖人たちはこの不気味な現実との戦いを報告しており、悪魔の存在は特定の時代に限定された現象と片付けることはできないからだ。また、世界の中の悪によって悪魔の存在を説明しようとする試みに対しても懐疑的だ。私たちの周りに見られる極端で非人間的な悪や悪質な行為には、悪魔が存在し、活動していることは事実だが、個々のケースで、それが実際に悪魔によるものであると確信を得ることは事実上難しい」という(以上、バチカンニュース2024年9月25日から)。