では脳と同じようにネットワークを作る菌類はどうなのでしょうか?

アメリカナラタケと呼ばれる菌は地下に9平方キロメートル(3㎞×3㎞)、およそサッカー場1300個分に及ぶ巨大なネットワークを築く種も存在します。

この菌は最大で8500年にわたり生きて成長を続けていると考えられており、地球で最も大きな生命とされています。

そこで今回、東北大学の研究者たちは、ネットワーク構造を作る能力がある菌類に図形を認識する能力があるかどうかを調べることにしました。

菌類は図形に応じて異なるネットワークを形成する

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エサとなる木片の配置パターンとそれぞれの図形的特徴/Credit:Yu Fukasawa et al ., Fungal Ecology (2024)

菌類も図形を認識できるのか?

認識できているとしても、人間はどうやってそれを確かめるのか?

新たな研究ではこの難題を解決する手段として、非常にユニークな方法をとりました。

実験ではまず木材をエサにする菌類(チャカワタケ)とエサとなる9個の木片が用意され、チャカワタケを木片に塗り付けました。

次にチャカワタケ付きの木片を上の図のように円型とX型に配置し、116日間にかけて培養を行いました。

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菌類が成長していく過程/Credit:Yu Fukasawa et al ., Fungal Ecology (2024)

すると先にも図で死したように、菌糸が成長して最終的には異なる形状のネットワーク構造を形成することがわかりました。

円型とX型をベースにしたネットワーク構造には、素人目にも大きな違いが存在しているのがわかります。

そこで研究者たちは、エサとして使用している木片の減少量や、木材と菌糸束の接続数などを調べてみました。

(菌糸束:数十本から数百本の菌糸が束になったもの。単純に束になっているものの他に表皮部分や通路部分に役割がわかれているものもあります。図では一番右の太い線になっている部分です)