実際、小さな子供に円型とX型のポイントが描かれた紙と鉛筆を渡して線を描かせても、ここまで整然としたものは作れないでしょう。
しかし自然界に生息する菌類には、それが可能な種が存在するのです。
この白い物体の正体は、木材などを栄養源に生活するチャカワタケ(Phanerochaete velutina)と言われる菌類の一種です。
なぜ脳も目もない菌類が、意図を持ったかのような構造を作れたのでしょうか?
ネットワークが生み出すものとは?
私たち人間の複雑な認知能力は、脳に存在する神経細胞のニューラルネットワークに依存しています。
人間が何かを記憶したり学習したりすると、ネットワークが変化して新たな接続が形成され、ネットワークを流れる電気の流れが変化します。
このネットワークの変化によって、私たちは楽器を演奏するスキルや外国語の習得が可能になります。
この事実は、ネットワーク構造は記憶や認知能力を生み出す母体となっていることを示しています。
ネットワークの個人差は、人間の性格や思想の違いすら生み出すことすら可能です。
ロボトミー手術が人間の人格を破壊してしまうのも、脳のネットワークを物理的に破壊してしまうからだと言えるでしょう。
人間は脳内のネットワークを維持することで記憶やスキルを維持し、ネットワークを進化させることで知識や技能を向上させていきます。
さらに近年の急速な脳科学の進歩により、人間の特定の認知能力が、脳内に存在するどのネットワークに対応しているかも明らかになってきました。
たとえば人間の脳内には図形を認識するためのネットワーク群が存在しており、三角形を認識するときと四角形を認識するときには別々のネットワークが活性化していることが判明しています。
この結果は、人間の脳内には三角形を認識するネットワークと四角形を認識するネットワークの両方が存在していることを示しています。