加えて、清水にとっては優勝にこだわる理由がある。前回J2を戦った2016シーズンは、松本山雅と同勝ち点(84)で、得失点差で2位に滑り込んだギリギリの昇格劇だった。

昨季の昇格プレーオフ決勝(2023年12月2日)では、“あと1分”の状況から東京ヴェルディにPKを献上し、悲劇的な最後を迎えた清水(1-1で引き分け)。因縁の地である国立競技場でそのトラウマを払拭し、J2初優勝という“タイトル”を手に来季のJ1で旋風を巻き起こす下地を作りたいところだ。


横浜FC 写真:Getty Images

負けなし記録の更新を狙う横浜FC

一方の横浜FCは14試合負けなしと、他を圧倒する勝負強さが光る。これまでの総失点は19と、試合数の半分以下の守備力を誇っている。複数失点を喫したのは14試合中2試合のみ。しかもその2試合も引き分けに持ち込むなど、手堅さではJ2随一だ(6月23日対東京V2-2、7月14日対水戸ホーリーホック2-2)。

シーズンを通して四方田修平監督が築いた【3-4-1-2】のフォーメーションを貫き、ソリッドな守備からカウンターを狙う戦いを続け、一時は首位を独走した。

攻撃のキーマンは、DFながらも正確無比な左足でチャンスを量産する福森晃斗だ。今シーズンからヘッドコーチに就任した中村俊輔氏の指導の下、FKやCKはもちろん、左サイドからのアーリークロスなど、硬軟交えたキックで積み上げたアシスト数は前節終了時点で2位を大きく突き放す「14」。清水との前回対戦でもアシストを記録しており、“分かっていても止められない”その左足は今回も清水DFを翻弄するだろう。

追う立場の横浜FCは、負けなし記録の更新と同時に勝ち点3を狙うべき一戦となる。J2の負けなし記録は2012シーズンの甲府が持つ「24」で今シーズンでの記録更新は不可能だが、J2では“反則級”といわれる巨大戦力を誇る清水を連破し、再逆転して優勝すれば、J1での戦いに向けて自信につながるだろう。そして、“エレベータークラブ”という有り難くないレッテルを、自ら払拭したいところだ。


北川航也 写真:Getty Images

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