■製作者は「驚いています」

時を同じくして記者も別ルートから製作者を特定しており、話題のハガキはデザイナー、現在は染色家としても活動するウチウ堂・川並良太さんが10年前に発表した作品と判明したのだ。

事の経緯を説明したところ、ウチウ堂の代表者は取材を快諾。

「確かに、私が10年前に発表した『切手をかざる』という作品で間違いありません。今回多くの方から、Xで話題になっているという連絡を頂きました。ご無沙汰していた友人などからも連絡があったり…。正直、10年も前の作品なので、反応の大きさに驚いてます」と、率直な感想を寄せてくれたのだ。

製作当時の2014年は消費税率が5%から8%に引き上げられた年で、全国的に不景気、悲観的なムードが漂っていた。そうした中で新料金・新デザインの切手が発行されるようになり、普通切手「花」のデザインの美しさが話題になる。

そこで2.6×2.2cmの切手を小さく美しい絵画に見立て、「飾る」という表現を作品にすることを閃いたのだ。

ハガキ表面に見つけた謎の記号、印刷ミスと思いきや… 意外すぎる正体が「天才のアイデア」と話題
(画像=『Sirabee』より引用)

なんとも粋なデザインには発表当初も大きな反響があり、ウチウ堂でも販売をスタート。しかし、諸々の作業が手間となり、在庫はあるものの販売を停止することに。古い機械を用いて「活版印刷」という方法で1枚ずつ手刷りで印刷しているため、大量生産もできないそうだ。

だが、今回の反響の大きさを鑑みてか「地元の就労継続支援B型事業所にご協力頂き、パッケージや発送などを業務委託することで、近いうちに販売再開を予定しております」と、なんとも嬉しいコメントも得られている。

素晴らしい作品を見つけてネット上に発信したら予想外のバズりを見せ、作者本人にもその投稿が届く…というのは、SNS界隈で稀に見られる現象。

たった1件のポストによって10年も前の作品に再び日の目が当たり、大きな再評価へと繋がり、デザイナー本人にまで多くの声が届き、再販にまで至った一連の経緯は「SNSの奇跡」と呼んで差し支えないだろう。