サッカーのPK戦やピアノコンクール、そして就職の最終面接など、私たちの人生にはその後の報酬量に決定的となる、重要な瞬間が存在します。
しかし「オリンピックには魔物が潜む」と言われるように、私たち人間はしばしば「最も重要な瞬間」に最悪のパフォーマンスに陥ることが知られています。
これは単なる偶然ではなく統計的にも示されており、試合終了間近のバスケのフリースローなど、重要性が極めて高い場面で選手たちの成功率が低下することが示されています。
米国のカーネギーメロン大学(CMU)は以前から、このような莫大な報酬を前にした際のパフォーマンスの悪化が、どのような仕組みで発生するかを人間に近いサル脳を用いて調査しており今回、遂に根底に存在する脳のメカニズムの解明に成功しました。
莫大な報酬はいったいどのような仕組みで、あり得ないような大失敗をうみだしていたのでしょうか?
研究内容の詳細は2023年4月16日にプレプリントサーバーである『bioRxiv』にて公開されました。
※この研究は2024年9月12日付けで、科学雑誌『Neuron 』に掲載されました。
目次
- 大事な場面で失敗するのは人間だけじゃない
- 本番での失敗は「心の弱さ」が原因ではない
大事な場面で失敗するのは人間だけじゃない
最高の舞台で思いもよらない失敗をする。
しかもそれが「実力を出し切れない」といった可愛いものではなく、練習中1度も失敗したことがなかった部分で起きてしまった。
悲しいことですが、似たような悲劇はオリンピックや国際コンクールのような世界的な大舞台から学校行事まで至るところに溢れています。
一方、歴史的には、このような悲劇は主に緊張などに対する「メンタルの弱さ(精神的問題)」が原因とされてきました。
そしてまたこうした失敗は、人間特有の現象であると一部の研究者たちは考えていました。