どちらも痛いことには変わりありませんが、日本人にとってより身近なのはバラなどのトゲ(prickles)のほうと言えるでしょう。
大麦や米の鋭い先端部分も分類的にはバラなどのトゲ(prickles)のほうに属しますし、人の衣服などに付着する、「くっつきむし」と呼ばれることもあるオナモミの種子に生えている、かぎ状のトゲもバラなどのトゲ(prickles)と言えます。
植物にとって表皮を変形させるだけで済むトゲ(prickles)は非常に有用なツールとして使われていることがわかります。
しかし植物の進化系統樹をみると、このトゲ(以降、トゲ=pricklesとします)の出現位置はバラバラであることがわかります。
進化的にも親戚と言える種の間でも、一方にはトゲがあり、もう一方にはトゲがないといった事態が多発しているのです。
またそれまでトゲがなかった2つの独立した系統に属する種が、それぞれ独自にトゲを獲得するといった変化もみられます。
研究者たちが調査したところ、植物たちは過去4億年間において実に28回も独立してトゲを獲得していることが示されました。
このように、共通の特徴が異なる系統や種で独立に出現する現象を生物学では「収れん進化」と呼んでいます。
コウモリや鳥やモモンガのように、翼のような構造を独自にみにつけた例がこれに当たります。
ただ収れん進化の多くは、異なる体のパーツや異なる遺伝子が変化することで、結果的に似た機能や形状を獲得します。
鳥の翼は毛がベースであり、コウモリの翼が表皮がベースであることからもわかるように、似たパーツでも成り立ちが全く異なっているのです。
ではバラなどのトゲの場合はどうなのでしょうか?
独立した系統や種で似たトゲがみられるときも、コウモリと鳥の翼のように、成り立ちが全く異なっていたのでしょうか?