「美しいバラにはトゲがナイ」が実現するかもしれません。
アメリカのコールドスプリングハーバー研究所(CSHL)で行われた研究により、バラなどのトゲが「ロンリーガイ(孤独な男)」と呼ばれる4億年前に誕生したたった1つの遺伝子によって制御できることが示され、この遺伝子を操作したところ、トゲを持つナス科の植物たちからトゲを取り除くことにも成功しました。
研究者たちはトゲを制御できるようになれば、トゲのせいで農業に適さなかった植物たちを利用できるようになると述べています。
トゲ遺伝子はどのようにして生まれ、そして失われたのでしょうか?
研究内容の詳細は『Science』にて発表されました。
目次
- 植物のトゲって何なの?
- 「ロンリーガイ(孤独な男)」遺伝子がトゲを生やしていた
- 「孤独な男」を取り除けば農業が楽になる
植物のトゲって何なの?
「美しいバラにはトゲがある」という慣用句を一度は耳にしたことがあるでしょう。
しかし実際には、美しいとは言えない植物の多くにもトゲが存在していることが知られています。
たとえばジャガイモ、トマト、ナスなどが属するナス属は現在1000種以上が知られていますが、そのうち400種にはトゲがあることが知られています。
トゲは植物を食べようとする動物に対する防御の他にも、ツルが壁や木に巻き付く手助けや、植物同士の競争、さらに水分保持など多様な役割があることが知られています。
しかし厳密な植物学的分類においては、バラのトゲ(prickles)は真のトゲ(thorns)とはみなされてはいません。
サボテンなどに生えている真のトゲ(thorns)が構造的に枝の一種である一方、バラなどのトゲ(prickles)は表皮が変形したものとなっているからです。
どちらも痛いことには変わりませんが、両者のトゲの断面図をよくみてみると、真のトゲ(thorns)は硬い木質であるのに対して、バラなどのトゲ(prickles)は内部がコルク質であることが多く、比較的軟らかくなっています。