これまでの研究においても、力自慢の筋肉量に関するデータは報告されているものの、その結果は全身を通した数値に限られていて、部位ごとの詳細なデータはよく分かっていませんでした。
そこで今回、研究グループは、磁気共鳴画像(MRI)検査を用いることで、下半身の部位ごとの筋肉量を詳しく調べ上げました。
また、得られたデータと、特別な運動をしていない一般人、陸上競技100m競走のトップスプリンターのデータとを比べることで、彼の筋肉がどれくらい大きいものなのか、またその発達度合いは部位ごとに異なるのかを明らかにしています。
ちなみに、研究グループによると、本来のMRI検査では上半身の筋肉量も計測できるものの、彼の肩と腕が大きすぎて、上半身の計測ができなかったそうです。
そんな規格外の彼ですが、下半身の筋肉はいったいどれほどのものだったのでしょうか? 次のページでは、筋肉のデータと食生活をもとに、彼の強さに迫ります。
骨盤や大腿骨を安定させる筋肉の発達がスゴい
まず、下半身の筋肉全体でみると、彼の筋肉量は一般人のおよそ2倍(+96%)もあり、スプリンターと比べても、1.3倍(+32%)大きいことが分かりました。
それ以上に興味深いことに、下半身の筋肉量の発達度合いは部位ごとに大きく異なっていました。
特に発達していたのは、骨盤や太ももの骨(大腿骨)を安定させる役割を持ち、最終的には鵞足(がそく)と呼ばれる部位に付着する縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)、半腱様筋(はんけんようきん)という筋肉で、一般人に比べて、2.5~3倍も大きくなっていることが判明しました。
これらの筋肉は、一般にはマイナーな存在ですが、ラクダを持ち上げるのに相当する、500kgのデッドリフトを達成するためには、骨盤や大腿骨を安定させることが大切になるため、発達したものと考えられます。