例えば、ジェットが長くなれば、その分だけ宇宙空間のチリやガスなどの障害物にぶつかる確率も高まりますし、他にもブラックホールの向きが変化することでジェットの軌道が変わることもあります。

ところが研究者の分析によると、ポルピュリオーンのジェットは数十億年もの間、何にも妨げられることなく、ほとんど直線的に伸び広がっていたのです。

これは研究者たちによって非常に不可解な出来事でした。

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ポルピュリオーンのイメージ画像/ Credit: Caltech – Gargantuan Black Hole Jets Are Biggest Seen Yet(2024)

まずもってポルピュリオーンは地球から約75億光年の場所にありますから、約138億年という宇宙全体の年齢からすると、私たちが見ているポルピュリオーンはビッグバンから約63億年後に形成されていた姿なわけです。

これまでの研究で、宇宙全体はその始まりから今日に至るまで膨張する存在であることがわかっています。

つまり、ポルピュリオーンが形成された当時の宇宙は今日よりも遥かに密度が高かったのです。

イメージしてみましょう。

例えば、5両編成の電車にたくさんのお客さんが乗り込むとギュウ詰めになりますが、電車を10両まで伸ばすと各車両の密度が減って、お客さんも楽に乗車できます。

このとき、ある乗客が先頭車両から後方車両まで移動するとしたら、どちらがより真っ直ぐ進めるでしょうか?

当然ながら、お客さんがまばらな10両編成ですよね。

5両編成のギュウ詰めの中を移動するとしたら、他の乗客にぶつからないようジグザグに移動しなければなりません。

ポルピュリオーンはまさに5両編成の電車の中で発生したのにも関わらず、なぜか真っ直ぐ進むことができたのです。

(こちらはポルピュリオーンの全体像を360度から眺めたアニメーションになります。音声はありません)

この点から研究者らは「ポルピュリオーンがどうやってジェットを真っ直ぐ飛ばすことができたのか、現時点ではよくわからない」と述べています。