■事故発生時の様子が痛々しい…

今回の事故発生時の様子について、ツイート投稿主・ゆきちさんは「いつも通り車を出そうとした際、タイヤに違和感があり不思議に思ったら、猫さんが両足を引きずりながら車の下から出てきました。パニックになりましたがすぐに病院へ連れて行って診察してもらったところ、大腿骨と脛骨骨折と診断されました。幸い内臓などの損傷はなく、命に別状はなかったのでホッとしました」と振り返っている。

猫はすぐ入院となったのだが、診察が終わった後も後ろ足を引きずりながら逃げようとする姿が頭から離れず、ゆきちさんは猫に対する申し訳ない気持ちと罪悪感で押しつぶされそうな状態になり、怖い思いと痛みを与えてしまったことをとても悔やんでいたのだ。

しかし「いつまでもメソメソしていても意味がない」と考えを改め、今後このような事故が起こらないようにするべく、少しでも多くの人々への注意喚起になればと今回のケースをツイッターに投稿したのだという。

猛暑日に車を出しただけなのに… 全ドライバー盲点の事故が「怖すぎる」と波紋
(画像=『Sirabee』より引用)

また、ゆきちさんは事故が起こった月極駐車場の管理者にも相談し「野良猫が車の下にいるかもしれないので確認をお願いしたい」旨を記したメッセージを各車両に残すなど事故と向き合い、防止のために真摯な反省と努力を重ねているのだ。

■「令和の猫事情」は過去と違う

続いては、日本動物病院協会の理事を務める獣医師・吉田尚子氏に「車両の下で猫が涼んでいた」という今回のケースについて、詳しい話を聞いてみることに。すると、ペットとしての人気が依然として高い犬や猫だが、これらの動物を取り巻く現代の「環境」が大きく変わっているに気付かされたのだ。

吉田氏は開口一番、「動物病院では犬や猫の室内飼いを推奨しています」とコメント。続けて「昨今では動物だけでなく、人間も体温調整が難しい気温が珍しくありません」「夏場は車の下で涼んだり、冬場はボンネットで温まる猫が増えていますが、これは動物にとって屋外がいかに過酷な環境であるかということになります」と、その背景について補足している。

さらに吉田氏は「極端に暑い日や寒い日に猫を屋外で放し飼いにする飼い主は少ないのですが、本当に注意すべきは季節の変わり目になります」「そうした時期の微妙な気温は飼い主の油断を招き、事故にも繋がりやすくなります」と注意を喚起。

猛暑日に車を出しただけなのに… 全ドライバー盲点の事故が「怖すぎる」と波紋
(画像=『Sirabee』より引用)

「暑さや寒さから逃れたい」といった理由以外にも「何か物に隠れていたい」という猫に固有な心理が働き、そうした背景が車の下に潜む事故に繋がっているのではとも予想している。入院時に猫を病院で預かる際には、ケージの中にさらに「隠れるスペース」を設けるほどというから、驚きである。

また気温だけでなく、感染症や交通事故のほか、従来の身軽なイメージからすると意外に思われるかもしれないが、猫にとって屋外での生活は「高い場所から落下して骨盤を骨折する」といったアクシデント発生のリスクを孕んだものになるという。

ここ数十年の間でペットの飼育法が大きく変わり、屋外の犬小屋で生活する犬を見かけなくなって久しいが、それは猫も同様。吉田氏は「ときどき外に出す、のような中途半端なことをせず、室内での飼育を徹底することを推奨しております」と、繰り返し注意を喚起している。

しかし屋内での生活が続けば、猫も運動不足になってしまうのでは…と尋ねたところ、じつは猫は「広範囲の運動」でなく「上下の運動」ができればストレス解消になることが判明。

昨今のペット市場で人気の高い「上下の運動ができるケージ」や「キャットタワー」を使用すれば室内でも運動が可能なほか、食事を与える際もただ食べさせるのでなく「転がすとフードが出てくる」タイプの知育おもちゃを使用したり、キャットタワーの「下段から上段にかけてフードを少しずつ置く」といった工夫を凝らせば、狩猟本能も満足させられるのだ。

こうした話を聞くと、屋外で猫を生活させることのリスクがいかに高いかが感じられたかと思うが、万が一誤って猫との交通事故が起きてしまった場合、運転手が「絶対に気をつけなければならない」ポイントがあることをご存知だろうか…。