日本人が考案した「量子エネルギーテレポーテーション」をわかりやすく解説

2つの実証実験が成功したことにより、量子エネルギーテレポーテーションは理論から現実的な技術へと大きく踏み出しました。

ただエネルギーのテレポート自体には成功したものの、そのエネルギーを保存することはできませんでした。

B地点から取り出したエネルギーは不安定で、すぐに周辺の空間に飛び散ってしまったからです。

エネルギーの注入、テレポート、エネルギーの抽出の3つが実現しても、そのエネルギーの保存ができなければ実用面において問題になります。

そこで新たな研究では、B地点から抽出したエネルギーを保存するための新たな方法が考案されました。

3つ目の量子ビットにエネルギーを保存する

新たな研究は2023年に行われた2つ目の、量子ビットを用いた研究を拡張したものになります。

2023年の研究では2つの量子もつれ状態にある量子ビットAと量子ビットBが用意されました。

量子ビットはもつれ状態にあると同時に、エネルギー的に最も低い状態に置かれます。

これによって空間に存在するゼロポイントエネルギーに相当する状態になります。

また量子コンピューター内部では2つのビットは物理的に隔てられていました。

研究者たちは論文中にてこの状態を「準真空」と述べています。

次に量子ビットAだけに観測と同時にエネルギーが送られました。

そして量子ビットBに観測結果が送信され、情報に従って量子ビットBに対する操作を行いました。

すると量子ビットBでは量子ビットAに注いだぶんのエネルギーに応じた、エネルギーの抽出が実現したのです。

ビット間の情報伝達は光の速度以下のため、エネルギーの移動はアインシュタインの相対性理論に反しません。

ただ先にも述べたように、抽出されたエネルギーはすぐに空間に散逸してしまい、使える形で保存することはできませんでした。