テキストには、村上春樹氏の小説『ノルウェーの森』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』から抜粋し、スマホと紙で同じ文章を読むことがないようにしています。
読書中は、ヘッドバンド(NIRS:機能的近赤外分光法)で前頭前野の活動を記録し、また呼吸パターンを測定するため、口と鼻を覆うエアロモニターを装着してもらいました。
その後、テキストの内容に関連した10の質問をし、読解力をテストします。
(※文字サイズなどは、紙とスマホでまったく同じに設定してある)
結果、テキストの違いに関係なく、紙媒体で読んだ方が、スマホに比べて、全体的に読解力のスコアが高いことが示されました。
これは、「電子機器での読書が理解力を妨げる」という先行研究と一致します。
それから、紙とスマホによって、学生の呼吸パターンに違いが認められました。
紙で読んだときの方が、スマホに比べて、より多くのため息が誘発されていたのです。
この場合のため息は、「1呼吸の深さが通常の呼吸の2倍になるもの」と定義されています。
さらに、どちらの媒体でも、読書中に前頭前野の活動が高まっていましたが、興味深いことに、スマホで読むときの方がより活発になっていました。
しかも、このスマホ読書による前頭前野の過活動は、「ため息の回数の減少」と「読解力のスコア低下」につながっていたのです。
では、スマホでも快適に読書するには、どうすれば良いのでしょうか?
「深呼吸」を取り入れて、脳のオーバードライブを防ぐ
これまでの研究で、人は認知的な負荷をともなうタスクに直面すると、ため息を着く回数が増えることが示されています。
ところが、スマホ読書による脳の過活動は、逆に、ため息の回数を減らしていました。
これについて、研究チームは「紙媒体での”適度な”認知負荷は、ため息の増加につながり、それが脳機能を回復させているのだろう」と指摘。