ドイツ高級週刊紙「ツァイト」電子版では毎土曜日には「グッドニュース」だけが配信される。週末をグッドニュースでエンジョイしてほしい、という編集担当者の心遣いだろう。ということは、平日はグッドニュースより圧倒的にバッドニュースが多いことを意味する。ストレスの多い平日を終え、週末ぐらいは楽しいニュースと希望を感じる情報を提供したいという配慮だ。
実際、ドイツでは暴風雨、洪水が襲い、イスラム過激派テロ事件も頻繁に生じている。ドイツ国民経済は日本を抜いて世界第3位だが、過去一年間はマイナス成長が続いている。脱原発政策の影響でエネルギーコストは急騰し、輸出大国の屋台骨を支えてきた自動車産業は中国製の電子自動車(EV)の進出で厳しい一方、中国市場で売り上げを伸ばしてきたメルセデス・ベンツ社はここにきて売れ行きが停滞している、というニュースが報じられたばかりだ。
当方はこのコラム欄で「毎日が『13日金曜日』だ」(2024年9月15日)という記事を書いた。9月13日は「13日金曜日」だったが、大多数の現地メディアは「金曜日13日」を話題にしなかった。古いテーマであり、迷信に過ぎないからだろうか、と考えていた時、知人のポーランド人は「もはや『13日金曜日』だけが不吉な日ではなくなったからだよ。考えてみろよ。ウィーンでもイスラム過激派事件が起きたばかりだ。ウィーンで開催予定だったアメリカのポップスター、テイラー・スウィフトのコンサートはキャンセルされた。ドイツでは橋は崩れ、至る所が洪水や大雨だ。少なくとも、欧州では最近、毎日が『13日金曜日』となったのだ。そんな時、誰がわざわざ『今日は13日金曜日だぞ』と叫ぶだろうか」と言うのだ。知人の説明は非常に説得力があった。
ところで、当方も「ツァイト」電子版から週末に配信されてくるグッドニュースを楽しみにしている一人だ。今週のグッドニュースのトップは「ドイツにおける100歳以上の人々の数が増加」というニュースだ。「ツァイトオンライン」によると、過去10年間で、ドイツで100歳以上の人々の数は増加した。連邦統計局によると、2022年にはドイツで100歳以上の市民が1万6800人以上いた。2011年には1万3400人だった。そのうち男性はわずか15%に過ぎないという。