この研究では、20世紀の商業捕鯨による捕獲個体または近年座礁した個体である、北半球のシロナガスクジラ、ナガスクジラ(Balaenoptera physalus)、ザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)計3種20頭から採取された耳垢栓を使用し、1870年〜2016年までの146年間のストレス評価を行いました。

人間の活動がクジラにストレスを与えていた
人間の活動がクジラにストレスを与えていた / Credit:pixabay/ナゾロジー編集部

その結果、20世紀の商業捕鯨による捕獲頭数とコルチゾール測定値に密接な相関関係がある、すなわち、商業捕鯨がヒゲクジラ類にストレスを与えていたことが示されました。

また、興味深い点として、1939年〜1945年の第二次世界大戦中には、商業捕鯨による捕獲頭数が減少したにもかかわらず、コルチゾール測定値の増加がみられました。

このことから、水爆、戦艦、飛行機、潜水艦を使用した海戦などの戦時活動や船舶数増加が、ヒゲクジラ類にとってストレス要因であった可能性が示唆されました。

戦後、商業捕鯨が再開されると、捕獲頭数増加に伴いコルチゾール測定値も増加しました。しかし、1970年代に商業捕鯨モラトリアムが採択され、商業捕鯨が停止されると、コルチゾール測定値も減少したという結果が出ました。

ところが、再びコルチゾール測定値の増加が確認されました。検証の結果、1970年から2016年までの海面水温異常と正の相関関係が認められました。

つまり、海面水温異常の頻度増加が、クジラにとってのストレス要因として、商業捕鯨にとって変わったことを示すと結論づけました。

研究材料は耳クソという思いもよらぬものでしたが、環境問題を考える上で、他の生物への影響は慎重に考慮しなければなりませんね。

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参考文献

Whale earwax reveals just how much human activity can stress out marine mammals
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2018/november/whale-earwax-reveals-just-how-much-human-activity-can-stress-out.html
How Whales Hear: 3D Computer Simulations of Baleen Whale’s Head Point to Skull Vibrations
https://today.ucsd.edu/story/how_whales_hear_3d_computer_simulations_of_a_baleen_whales_head_reveals_its