地球上最大の哺乳類であるシロナガスクジラ(学名:Balaenoptera musculus)は耳クソも巨大でした。
2007年、アメリカのカリフォルニア州で船との衝突により死亡した体長21.2mのシロナガスクジラから取り出された耳クソはなんと長さ25.4cm!
25cmといえば、身近なものではジャポニカ学習帳の縦の長さ、1Lペットボトルの高さと同程度です。
しかも、ただデカいだけではなく、ヒゲクジラ類の耳クソは耳垢栓(じこうせん)と呼ばれ、重要な研究材料として使われているのです。
アメリカ・ベイラー大学(Baylor University)のスティーブン・J・トランブル(Stephen J. Trumble)氏ら研究チームは、耳垢栓から146年分のデータを収集し、人間の活動がヒゲクジラ類にストレスを与えていたことを明らかにしました。
研究の詳細は2018年11月2日付で『Nature Communications』に掲載されています。
目次
- クジラの耳クソは一生溜まり続ける
- 耳クソから146年間のストレスの正体が判明
クジラの耳クソは一生溜まり続ける
クジラの耳は、人間と同じように目の少し後ろにあります。耳介は無く、体の外側から見ると耳の穴は塞がっていますが、人間が耳掃除をする空間にあたる外耳道(がいじどう)は内部に存在しており、そこで耳クソの塊である耳垢栓が形成されます。
当然、外耳道は体外とつながっていないため、途中で海に流れてしまうことはありません。つまり、生涯耳クソが溜まり続けるのです。
そんなに耳垢が溜まっていたら、外の音が聞こえないんじゃないかと思う人もいるかもしれません。
しかし、ヒゲクジラ類の聴覚のメカニズムは、人間のように音波が外耳道、鼓膜に伝わり感知する「空気伝導」ではなく、頭の骨に振動が伝わり感知する「骨伝導」である可能性が高いといわれています。