ヒズボラ側は事件の背後にはイスラエルの情報機関のモサドが暗躍しているとして、イスラエル側に報復を表明している。イスラエル側はレバノンの今回の事件については何も言及していない。一方、欧米の情報機関専門家は「このような工作は軍事組織か情報機関しかできない。時間をかけて計画したものだ」と指摘、案にイスラエルのモサドの工作と受け取っている。

ドイツのケルン大学の政治学者トーマス・イエーガー教授は18日、ドイツのメディアとのインタビューで、「1990年代、電話や車に爆弾を仕掛けるといった工作はあったが、携帯の通信機器に爆薬を仕掛け、同時間に遠隔で爆発させるといった工作は初めてだ。全く新しい次元の事件だ」と説明している。

ところで、18日に入ると、首都ベイルート近郊やベカー渓谷(高原)、レバノン南部など、ヒズボラの拠点とされる地域で無線機が相次いで爆発し、レバノン側の発表によると、20人が死亡、450人以上が負傷したという。ヒズボラ関係者はイスラエルに対して報復を宣言しているが、高度な軍事技術を有するイスラエル側の連日の遠隔爆破攻撃に不安が高まってきているという。

ちなみに、イスラエルの日刊英字新聞「エルサレム・ポスト」は「ヒズボラとの戦いでの大きな成果だ。私たちは非常に誇りに思うべきだ。今回の攻撃は、世界中で最も優れていると称賛されているわが国の安全保障システムの素晴らしさを示しているからだ」と書いている。

イェーガー教授は「この事件がイスラエル側の工作とすれば、その目的は何かだ」と指摘、「パレスチナ自治区ガザの紛争以来、レバノンとイスラエル両国国境で戦闘が続き、数万人のユダヤ人が北部から避難している。そこでヒズボラを攻撃し、国境線から30㌔以上後退させ、ユダヤ人が安全に住めるようにすることが狙いではないか」と分析している。

いずれにしても、ページャー爆発はヒズボラにとって屈辱的なことだ。体面を保つために何らかの対応を取る必要が出てくるが、イスラエルとの全面戦争は避けたい、というのが本音だろう。それに対し、ネタニヤフ首相はレバノンでの攻勢強化を支持している。ガラント国防相は18日、「戦争は新たな段階に入ってきた」と述べ、イスラエル軍がガザでの戦争と並行してレバノンでも全面戦争を遂行する方向にあることを示唆している。