レバノン発の外電には驚かされたというか、ハリウッド映画を観ているような感覚になって戸惑いを感じた。レバノンで17日、無数の携帯用通信機器ページャーが突然爆発し、少なくとも12人が死亡、2800人が負傷した。スーパーで買い物していた男性が爆破音と共に倒れるシーンがソーシャルネットワークで映し出されていた。何が生じたのか最初は理解できなかった。

レバノンのナジブ・ミカティ首相(右から二人目)は保健省公衆衛生緊急オペレーションセンターを訪問(2024年9月18日、レバノン政府公式サイトから)

メディア報道によると、レバノンのイスラム教シーア派テロ組織ヒズボラ(神の党)が購入したページャーが同時期に爆発したという。犠牲者の大多数はヒズボラのメンバーだ。外電によると、駐レバノンのイランのアマニ大使も犠牲者の中に入っていた。これまたビックリした。シーア派の盟主イランがヒズボラに武器を支援していることはよく知られていたが、今回のページャー爆発事件でそのことが改めて追認された。なぜならば、ヒズボラはイスラエル側に盗聴されることを警戒し、メンバー間の連絡はもっぱらページャーで行っていた。そのページャーをイラン大使も所持していたということは、イラン側とヒズボラが常に密接な連絡を取っていることが明らかになったからだ。

ページャーは台湾の会社の製品で、デバイスのロゴ(「ゴールド・アポロ」)も台湾の会社のものだが、会社責任者の話では、レバノンのページャーは台湾で製造されたものではなく、ハンガリーのブタペスト北東部にある会社「BACコンサルティング」が3年前からライセンスを得て製造した製品ではないかというのだ。そこでドイツ民間ニュース専門局ntvのジャーナリスは早速、ハンガリーの会社BACに電話取材したが、会社責任者からは返答がなかったという。会社は外観は個人住宅で、どうやら架空の会社のような感じがするという。米NBC記者が会社責任者に聞き出したところ、「会社は技術製品の製造会社ではなく、コンサルティング会社だ」という。何か雲をつかむようなストーリー展開となってきた。