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ついに現れた、ホンダ版ハイエース
簡素に見えて、随所に合理的なこだわりが!

ついに現れた、ホンダ版ハイエース

「ついに現れた、ホンダ版ハイエース」現在のハイルーフミニバンはここから始まった!初代ステップワゴン【推し車】
(画像=1列目のフラットシートが可能になると、フラットベッドと3列目を跳ね上げての荷物積載の両立が可能にになった,『MOBY』より 引用)

一方、そのような中でもホンダの販売現場が望んで止まなかった車種が、「ハイエースみたいなクルマ」です。

初代オデッセイが早くから構想されつつも、「これじゃホンダ車としてカッコわるい」と経営陣や開発陣から否定されるのみならず、販売現場からも否定され、なかなかモノにならなかった理由は、「ハイエースみたいじゃないから」だったかもしれません。

しかし、どうにか市販にこぎつけたオデッセイが、同時に「クリエイティブ・ムーバー(生活創造車」というコンセプトを打ち出し、オデッセイ自身のホンダ史上最大の大ヒット(何しろ初代シビック以上)を記録した時、ホンダの歯車の動きは加速しました。

第2弾以降のクリエイティブ・ムーバーは、走るベッド的なカップル向けトールワゴン「S-MX」、クロカン型シティオフローダーの「C-RV」で若者の新たなカーライフを創造しつつ、ファミリー向けの新たな生活感を想像する、新型ミニバンを開発したのです。

それが1996年5月に発売された、初代「ステップワゴン」。

素っ気ないほどシンプルながら合理的なデザイン、ホンダ得意のM・M(マン-マキシマム・メカ-ミニマム)思想により短いボンネットへ極限されたパワーユニット部分と、背の高いスクエアなデザインで極大化されたキャビン。

運転席周りはコラム式シフトレバーや、足踏みパーキングブレーキで足元をクリーンにして、低床ハイルーフなので腰を落とした卑屈な姿勢になる必要もなく、1列目から後ろへらくらくとウォークスルーが可能です。

ハイルーフ化は全ての座席で座面を上げ、広い視界を提供するとともに乗降時のゆとりも産み、縦方向のスペースを有効につかったので、3列シートまで8人フル乗車してもゴルフバック3つが積めるほどのラゲッジスペースを余すほど。

まさに、ホンダの販売現場が長年望んだ「ハイエースみたいなクルマ」は、初代ステップワゴンによって、最高の形で実現したのです。

簡素に見えて、随所に合理的なこだわりが!

「ついに現れた、ホンダ版ハイエース」現在のハイルーフミニバンはここから始まった!初代ステップワゴン【推し車】
(画像=単なる小物入れではなく、フタを水平に固定してテーブルにできる、アシストレイ付ボックス…このへんの工夫は、初代シティ以来ホンダが得意とするところで、ステップワゴンではフルに活かされた,『MOBY』より 引用)

初代ステップワゴンは特に前期型の外観がかなり簡素でしたから、コストダウンで安くまとめたように見えますが、安くともそれを逆手に取るような工夫や、課題をクリアするためのこだわりにあふれていました。

軽商用車以外のホンダとしては初、しかも快適性重視の乗用ミニバンゆえに、モノコックには高剛性ストレートラダーフレームやクロスメンバーで補強され、まだ両側スライドドアの必要性が薄い時代でしたから、片側スライドドアで開口部を減らし、ボディ剛性を確保!

ボディの継ぎ目が目立つ部分、特にテールゲート左右には縦長の大型テールランプユニットを配し、安っぽく見えない工夫と視認性の良さが一石二鳥。

シートは乗用ミニバンらしく3列ともにゆったりできるサイズと厚みで選ばれ、2列目が2人用+畳めばテーブルにもなる補助席、後ろ向きにすれば対面でくつろげるスペースを設けた「回転対座」と、2列目3人用ベンチシートを跳ね上げる「ポップアップ」の2種類。

これが上級グレード「W」と標準グレード「G」で、2列シート車の「N」(※)では2列目を跳ね上げれば自転車4台を積めるほど広大なラゲッジになります。

(※「W」「G」「N」の3グレード名で、「WGN=ワゴン」を表した)

さらに「ポップアップ」は2列目だけ倒して3列目をソファーベッドのように使う、3列目も倒してフラットベッドに使う(後の改良で1列目もフラット可)など車中泊や休憩用のさまざまなアレンジが可能。

しかも「シートとフロアのダブルフラット設計」により、フラットシートの下へスキーなど長尺物を積める工夫もあって、フラットシート上に荷物を積めば、長尺物とその他の荷物を分けて収納できるなど、多彩な使い方を可能にしていました。

左右跳ね上げ式のシートも含め、この種のシートアレンジは誰もが使うわけではありませんが、当時はどれだけシートアレンジの種類があるか、各社競ったものです。