開発部門ではないけれど

隅々まで工夫と配慮が施された魔法のかまどごはんですが、これを開発した村田氏は上述の通り炊飯器の開発部門ではなく、品質管理部門に在籍していました。

「“技術者”というカテゴリーが、私の中でも曖昧なところがあります。私が入社した頃は“開発部門=技術者”というイメージを持っていました。

しかし、品質管理部門で働き始めて8年ほど経った時、『自分はちゃんと“技術”を持ってる』 という自信が湧いてくるようになりました。自分は開発部門の人間ではないけれど、それでもエンジニアなんだという自覚です」

開発部門所属ではないものの、その時従事している役割をこなすことによってエンジニアとしての自覚を持つまでに至った村田氏。最初の着想から多くの試作を経て完成に至った魔法のかまどごはんは、2023年10月20日に発売されました。

しかし、そこから3カ月もしないうちに村田氏は運命の日を迎えます。

2024年1月1日、能登半島で最大震度7の大地震が発生しました。それまでは「一風変わったアウトドア用品」という見方をされていた魔法のかまどごはんは、この日を境に「被災生活の必需品」として評価されるようになります。

次回、後編は「震災以後」の話を中心にお届けしたいと思います。