タスマニアデビルの復活で生態系が回復する
タスマニアデビルの再導入には、れっきとした理由があります。
現在、オーストラリア本土では、野生のネコやキツネが膨大な数の動物を殺し、生態系のバランスが崩れているのです。
このネコとキツネは、オーストラリア原産の生物ではなく、ヨーロッパの移住民によって18世紀に持ち込まれました。
かつてはディンゴがネコやキツネの数をコントロールしていたのですが、ここ数十年で野生のディンゴがほぼいなくなったため、今ではネコとキツネの好き放題になっているのです。
しかし、タスマニアデビルの導入により、この状況は大きく変わります。
フォークナー氏によれば、「ネコは夜行性のタスマニアデビルに遭遇しないよう、早朝や夕方にエサを探すようになる」といいます。
そのおかげで、他の夜行性の小動物がネコに襲われなくなり、保護につながるのです。実際、ネコよりもタスマニアデビルの数が多い地域では、複数の夜行性動物が増加傾向にあることが分かっています。
キツネについても同じことが言えます。
これまで、外来のキツネを6回ほどタスマニア島に導入する試みがなされましたが、そのすべてで失敗しました。これはタスマニアデビルがコロニーを形成して、キツネが住み着けなかったからだと言われています。
タスマニアデビルは、外来種からオーストラリアの生態系を守る目的で期待されているのです。
参考文献
livescience
smithsonianmag
提供元・ナゾロジー
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