本調査は2020年10月〜2022年9月の間に南ポーランド在住の10歳〜13歳の子供689名を対象に行われました。
これらの子供は70.5%が心身ともに健康なグループ、29.5%がADHDを持っているグループに分けられています。
健康な子供は地域の学校から無作為に選ばれ、ADHDの子供は心理学者、医師、親を通して集められました。
調査では経験豊富な臨床心理士によって、子供のたちのメンタルヘルス、記憶力、注意力、実行機能などが徹底的に評価されています。
また保護者の協力のもと、子供の生活習慣や身体活動レベル、近隣の緑地環境について回答してもらいました。
緑地環境に関しては、自宅から半径500メートル以内に樹木や草地などがどれくらいあるかを評価しています。
これらのデータを総合的に分析した結果、近隣の緑地環境とADHDの有病率との間に直接的な関連性は見出されませんでした。
自宅近くに緑地がたくさんあるからといって、必ずしも子供のADHDの発症リスク低下にはつながっていなかったのです。
ところがチームはある重要な傾向を発見しました。
それは自宅近くの「樹木」面積が多いと、子供の身体活動レベルが有意に上昇しており、それがADHDの発症リスクの低下につながっている証拠を見出したのです。
興味深いことに、草地面積の多さはADHD有病率の低下と関係しておらず、子供のADHDを防ぐ効果はないことが示されました。
これについて研究者らは、平面的で背も低い草地は子供のたちの身体活動を促進しづらいことが関係していると指摘。
対照的に木々に覆われた場所は、例えば木登りであったり、ぶら下がりであったり、虫捕りやかくれんぼ、障害物の回避など、草地よりも遥かに強度の高い身体活動を促します。
これが子供たちの身体活動レベルを高めて、脳の有益な神経発達を促し、ADHDの発症予防につながった可能性があると説明しました。