そこで今回、テキサス大学の研究者たちは地球上に最初に誕生した細菌や古細菌とその後に誕生した真核生物の対ウイルス防御機構を比較することにしました。
私たち真核生物の対ウイルス防御機構は、彼らのお古だったのか、それとも自社開発した特許商品だったのでしょうか?
対ウイルス防御機構は古細菌から真核生物に受け継がれていた
真核生物の対ウイルス防御機構はどこから来たのか?
これまでの研究によれば、細菌のグループにおいて真核生物と似た防御機構が存在することが示されています。
たとえば「バイペリン(Viperin)」と呼ばれるタンパク質は危険なウイルスの兆候の可能性がある外来DNAを検出すると、ウイルス複製に必要な分子経路をシャットダウンすることで、ウイルス増殖を阻止します。
また「アルゴノート(Argonaute)」はウイルスなどの外来DNAを検出すると、それを切り刻んでウイルスの増殖を阻止したり、RNAに働きかけることでウイルスのタンパク質が合成されるのを阻害することができます。
この2つの仕組みは真核生物において幅広く存在しており、人間にも類似のものが存在します。
しかし先にも述べたように、真核生物は古細菌をベースに細菌との共生によって進化したとされています。
そこで新たな研究では古細菌のゲノムを分析し、バイペリンやアルノゴートが古細菌に存在するかどうかを調べました。
するとアスガルド古細菌と呼ばれる古細菌の一派において、これらのタンパク質の構造が、真核生物に非常によく似ていることが判明。
特にバイペリンと呼ばれるタンパク質の3次元構造は、上の図のように、アスガルド古細菌(左)と真核生物(右)の間で驚くほどの類似をみせました。