① は、そもそも、政治活動に関して「収支報告書に記載不要の金」というのは、あり得ないはずである。それを議員側が受け取った際にどのように認識していたのか、というのは「裏金問題」の核心である。そして、管理状況、使途、未使用金の使用予定は、それが、どの政治団体、或いは政治家個人に帰属する資金であったのかを判断する重要なポイントとなる。
それらの説明の結果、「政治家個人に帰属する政治資金の寄附」と判断されれば、そもそも違法寄附となる可能性がある上に、所属議員の個人所得となり、所得税の納税の義務も生じることになる。
本来、自民党の党紀委員会での処分に当たって、これらの点について個別にヒアリングをして、事実確認を行うことが不可欠だったはずだが、それが十分に行われたようには思えない。
だからこそ、総裁選で新総裁が選出されたら、まず、その点について個々の「裏金議員」に説明を求めることが必要だ。その結果、政治団体に帰属する資金であることについて納得できる説明が行われた議員については、その説明内容を国民に示すことで、その議員についての党紀委員会の処分が正当であったことが確認されたことになる。
一方、①~④の説明の結果、政治家個人宛の政治資金の寄附だと判断せざるを得ない場合には、少なくとも、当該議員に所得税の修正申告・納税を行うよう求めることが必要になる(違法寄附を受けたことについての告発も検討の余地はあるが、検察が刑事処分済であるので実際上は処罰は困難であろう)。
このようにして新総裁が、国民が裏金議員の「不処罰」「不納税」に対する疑問・不満に向き合い、裏金議員に対する説明を求め、事実関係を明らかにすることができれば、岸田首相不出馬を受けての自民党総裁選は「裏金問題」で失った自民党の信頼回復のために大きく貢献することになる。
このような説明を求めることをせず、自民党としての事実解明のレベルが、党紀委員会の処分の前提事実と何も変わらないということであれば、今回の総裁選は、国民にとって「一体なんだったのか」ということになる。