2024年6月27日、中国共産党は、前国防相の李尚福と、その前の国防相だった魏鳳和が「職務上の便宜を図って巨額の金銭を受け取った収賄の疑い」により党内で最も重い党籍剥奪処分を受けたことを明らかにした。

中国軍では昨年夏から、兵器開発や調達を担う「装備発展部」や戦略核ミサイルを運用する「ロケット軍」で大規模な汚職調査が行われていた。李氏は装備発展部、魏氏はロケット軍でトップを務めたことがある。魏氏は 習近平国家主席の信頼が特に厚かったとされる。2人は装備品の購入費用や演習経費を水増し請求してキックバックを受け取ったり、人事を巡って賄賂を受け取ったりしていた疑いがある。核ミサイルのサイロ建設を巡っても汚職があった模様だ。

これに先立つ2023年12月29日、全人代常務委員会が全人代代表に関する公告第二号を発表した。それによれば、以下9名の軍関係者が罷免された。

中央軍事委員会連合参謀部軍人代表:張振中 中央軍事委員会装備発展部軍人代表:張育林、饒文敏 海軍軍人代表:鞠新春 空軍軍人代表:丁来杭 ロケット軍軍人代表:呂宏、李玉超、李傳広、周亜寧

人民解放軍における汚職問題は、長年にわたって深刻な課題となってきた。特に、装備品の購入費用の水増しや賄賂の受け取りが頻繁に報告されていた。

習近平国家主席は、人民解放軍を本当の戦える軍隊に脱皮させるために大規模な粛清を行い、多数の軍高官を解任した。だが、共産党の一党支配の影響下にあり、透明性の欠如が指摘される人民解放軍がその根深い腐敗体質を払拭できるかは極めて疑わしい。

【参考資料】 ・阿南友亮「中国はなぜ軍拡を続けるのか」新潮選書、2017年 ・「習近平主席、中国人民解放軍の5つの「戦区」発足宣言」2016年2月1日、産経新聞 ・「中国軍の腐敗と規律」2014年6月19日、平和外交研究所 ・「中国軍で装備品購入費の水増しや賄賂、根深い腐敗体質…歴代国防相に党籍剥奪処分」2024年6月29日、読売新聞 ・「中国で高官が相次ぎ消息不明 習政権に問題が起きているのか」2023年9月25日、BBCNEWS.