繰り返すが、全ては、ゼレンスキー大統領が、あらゆるリスクを度外視し、戦争を継続させる、という意思を貫徹させるために行った政策判断の結果である。

膠着状態を作り出すのは、簡単なことではない。相手がロシアという巨大な軍隊であれば、なおさらだ。「成熟」は、様々な要素が重なり合って、ようやく生まれてきた状態であった。

もしそれを当事者が何とか強引にでも崩そうとするならば、崩れるだろう。そして崩れてしまった後は、簡単には元に戻らない。簡単には「成熟」は、再び訪れない。

アメリカの政策に批判的な見解を持っていることで知られるアメリカのジョン・ミアシャイマー教授が、トランプが当選しても停戦をもたらすことはできないだろう、と語る動画が出回り始めた。ミアシャイマー教授によれば、ウクライナが敗北する以外のシナリオでは、この戦争は終わらない、という。

ミアシャイマー教授の言説を、私は目につく限りは追ってきている。ただ全てを把握しているわけではないだろう。したがってより詳細な言説の変遷はわからない。しかしミアシャイマー教授が、ここまではっきりとウクライナの敗北以外のシナリオでは戦争は終わらない、と断言しているのは、今までは見られなかったように思う。

もし、ミアシャイマー教授が、数カ月前よりも今のほうが、よりウクライナに悲観的な見方をしているとしたら、それはそういうことはあるかもしれない。トランプ氏が当選しても、事態の推移に大きな影響は与えない、ということになるかもしれない。

成熟は成立し始めていた。しかし、崩れた。次に、成熟が成立しうるのがいつになるのかは、誰にもわからない。