「サッカーの競技規則には『こうしたことはしていい』、または『こうしたことは駄目なんですよ』というように、一つひとつ(事細かく)書かれているわけではありません。ですので、審判員は競技規則の第1条から17条に書かれている内容であったり、(ルールブックに載っている)“サッカー競技規則の精神”を考えます。安全で、お互いにとって公平(な試合にする)。審判員としてはこの精神がベースとしてあり、そのうえに競技規則の第1条から17条があるわけです」

「では、競技規則の第1条から17条の文言を覚えてさえいれば、良いレフェリーになれるのか。決してそうではありません。色々なシチュエーションがあるなかで、いかに臨機応変に競技規則を適用していくか(が審判員にとって最重要)。『ボールに水をかけてはいけません』と競技規則に書いてあれば、話は簡単なんです。でもこれについては書かれていない。そうした場合にレフェリーが何を以て判断するのか。それは競技規則と競技規則の精神です」

「お互いにフェアに、(相手への)リスペクトを持ってやりましょう。これは日本だけでなく、世界でもそうです(ワールドワイドで共通するサッカーの精神です)。競技者の安全を守ることもそう。こうしたサッカーという競技の精神をもとに、レフェリーはジャッジしていくものだと思います。ですので、今回のケースで高崎レフェリーがこういった判断をした(藤尾によって濡らされたボールの使用を認めず、ボール交換を指示した)というのは私自身間違っていないと思いますし、十分に理解できます」

「色々な意見が出てくるのは分かります。『やってはいけない(ボールに水をかけてはならない)とは競技規則に書いてないでしょ?』というように。ただ、それを言い出したらサッカーの試合では色々なことが起きますよね。それに対して『これは正しい』、『これは正しくない』と一つひとつ(厳密に)決めていくかと言われたら、(サッカーという競技に求められているのは)多分そういうことではないと思います」