IPOで最も重視されるのは、公募価格と初値の差だろう。IPOは近年大きな盛り上がりを見せているが、過去3年間で投資家が最も儲かったのはどの企業だろうか。2017年1月から2020年3月19日までのIPOの中で、初値の騰落率が高かった上位10銘柄を見ていこう。

新型コロナウイルスの影響で2020年3月のIPOは公募割れが相次ぐ

IPOは市場環境の影響を受ける。市況が低調であれば投資家がリスクを嫌うため、IPO市況も盛り上がりに欠けることになる。

新型コロナウイルスの影響で市況が低調となった2020年3月は、19日までに上場した17銘柄のうち13銘柄の初値が公募割れになっている。IPO投資を行う際は市場環境に注意を払いたい。2020年のIPO投資に関して言えば、特に初心者は慎重に判断したほうがいいだろう。

IPOの初値騰落率ランキングTOP10(2017年1月~2020年3月)

2017年1月から2020年3月19日までに、東証一部、東証二部、マザーズ、ジャスダックへ新規上場した278銘柄のうち、初値騰落率が高かった上位10銘柄は以下のとおりだ。

※筆者作成

第10位 ジェイテックコーポレーション <3446> ……騰落率331.11%

ジェイテックコーポレーションは、高精度ミラーや細胞培養装置の製造開発を手掛ける。大阪大学や理化学研究所などとの産学連携を行う研究開発型の企業だ。ジェイテックコーポレーションの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)研究開発型の企業でありながら上場時に堅調な利益実績があった
(2)ベンチャーキャピタルの保有比率が低い
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄だった

研究開発型の企業では、独自技術を活かした事業展開が期待できる一方で資金需要も多いため、事業として未成熟のまま上場を行うケースが多い。ジェイテックコーポレーションは、事業のベースができた上での上場であったことが人気化の理由の1つだろう。上場時のベンチャーキャピタルの保有比率も6%程度と少なく、需給面の懸念が小さかったことも挙げられる。IPOにおける優等生と言える案件だ。

第9位 Mマート <4380> ……騰落率333.87%

Mマートは、業務用食材のBtoB向け卸サイトの運営などを手掛ける。Mマートの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が8億円程度の小型案件であった
(2)ベンチャーキャピタルの保有がなかった
(3)上場時の業績推移が堅調であった

市場からの吸収金額が大きくないことに加え、既存株主にベンチャーキャピタルなどの短期的な売り圧力となる株主がいなかったことも需給面でプラスに働いた。業績が堅調に推移していた点も、買いを後押ししたとみられる。

第8位 ポエック <9264> ……騰落率337.33%

ポエックは、ポンプを中心とした環境・エネルギー関連機器、動力・重機関連機器などの製造・販売を手掛ける。ポエックの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が4億円弱の小型案件であった
(2)ベンチャーキャピタルの保有比率が低かった
(3)公募価格の設定に割安感があった

ポエックは市場からの吸収金額が小さく、ベンチャーキャピタルの保有比率も6%程度と低かった。そのため、需給面で初値が押し上げられた可能性が高い。業種自体には目新しさはないが、公募価格がPER11倍程度、PBR1.2倍程度と割安感のある設定だったことも要因と言えるだろう。

第7位 ビープラッツ <4381> ……騰落率354.55%

ビープラッツは、サブスクリプション(継続従量課金)のためのプラットフォームシステムをクラウドサービスとして提供している。ビープラッツの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が3億円程度の小型案件であった
(2)市場の関心の高い分野を手掛ける銘柄だった
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄だった

市場からの吸収金額が少ない小型案件であったことに加え、クラウドサービス、サブスクリプションといった市場が注目するテーマにマッチした銘柄であった点も、初値高騰に大きく寄与したと見られる。同社は上場時の最新通期決算が経常赤字であったが、市場テーマにマッチした銘柄であれば人気化する好例と言えるだろう。

第6位 ビーブレイクシステムズ <3986> ……騰落率361.08%

ビーブレイクシステムズは、労働集約型・プロジェクト型のサービス業向けにクラウドERP(統合型基幹業務パッケージ)の開発・販売を手掛ける。ビーブレイクシステムズの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が6億円弱の小型案件だった
(2)ベンチャーキャピタルの保有がなかった
(3)市場の関心の高い分野を手掛ける銘柄だった

市場からの吸収金額が少ない小型案件であり、既存株主にベンチャーキャピタルの保有がなかった点も含め、需給面が初値形成に大きく寄与したと見られる。クラウドサービス関連銘柄と、市場関心が高い分野であったこともプラス要素であろう。

 

第5位 ウィルズ <4482> ……騰落率372.40%

ウィルズは、上場企業と機関投資家をつなぐ「IR-navi」、および上場企業と個人投資家をつなぐ「プレミアム優待倶楽部」といったサービスの運営を手掛ける。ウィルズの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が3.5億円程度の小型案件であった
(2)ベンチャーキャピタルの保有比率が低かった
(3)独自性の高い事業を行っていた

市場からの吸収金額が少ないことに加え、既存株主のベンチャーキャピタル保有比率も1%程度と低い案件であったことが、需給面で初値高騰に影響したと考えられる。ブロックチェーン技術を活用した電子議決権行使のサービスを手掛けるなど、独自性の高い事業内容も要因と言えるだろう。

第4位 ウォンテッドリー <3991> ……騰落率401.00%

ウォンテッドリーは、ビジネスSNS「Wantedly」の運営を手掛ける。CEOである仲暁子氏はゴールドマン・サックス証券を経て、Facebook Japanの立ち上げに関わった後、ウォンテッドリーを設立した。ウォンテッドリーの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が約1.5億円と超小型案件であった
(2)市場の関心の高い分野を手掛ける銘柄であった
(3)上場時の話題性の高い案件であった

市場からの吸収金額は1.5億円程度と、IPOの中でもかなり小型の案件であった。SNS関連銘柄と市場注目度の高い分野であったことが重なり、需給面から初値が大きく押し上げられたと見られる。また、社長の経歴や超小型のIPOであることなど、話題性の高かったことも初値形成に寄与したと考えられる。

第3位 アジャイルメディア・ネットワーク <6573> ……騰落率415.67%

アジャイルメディア・ネットワークはSNSなどのクチコミを活用し、企業のマーケティング活動の支援を行う。特定のブランドや商品に積極的に関わり、SNSなどでの発言や推奨を行う熱量の高いファンを「アンバサダー」と定義し、企業とアンバサダーを結びつける「アンバサダープログラム」が事業の中核だ。アジャイルメディア・ネットワークの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)ニッチな分野で独自性の高い事業を行っている
(2)市場からの吸収金額が4億円程度と小型案件だった
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄だった

市場からの吸収金額が少ないことに加え、独自性の高い事業を手掛けていたことで、需給面から初値が高騰したと見られる。上場の前年(2017年)にはインテージ、電通グループ、マイナビの3社と資本業務提携を行っており、その点でも注目されていたと考えられる。

第2位 トレードワークス <3997> ……騰落率518.18%

トレードワークスは、証券会社向けのシステム開発から保守・運用までを手掛ける。また、それに付随してFXのシステム開発なども行っている。トレードワークスの初値が大きく上昇した要因としては、以下の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が5億円程度の小型案件だった
(2)市場の関心の高い分野を手掛ける銘柄だった
(3)ベンチャーキャピタルの保有がなかった

市場からの吸収金額が少ない案件、ベンチャーキャピタルの保有がない案件という需給面での材料を満たしていたことも要因だが、初値がここまで高騰したのは市場環境によるところが大きいだろう。同社が上場した2017年末は仮想通貨市場が大きな盛り上がりを見せており、仮想通貨市場のシステム開発にも意欲を見せていた同社が仮想通貨関連銘柄として注目されたと考えられる。

第1位 HEROZ <4382> ……騰落率988.89%

第1位のHEROZ、騰落率はダントツの988.89%だった。これは、IPOがブックビルディング方式となった1997年以降の最高記録である。同社はAIを活用したサービスの開発を行っている。BtoC分野では将棋ゲームなどのアプリ、BtoB分野では機械学習のAIサービスの提供を手掛けている。

HEROZの技術者が開発した「Ponanza(ポナンザ)」と呼ばれるAIが、2017年にプロ棋士に勝利したことでも知られている。HEROZの初値が大きく上昇した要因としては、以下の4点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が9億円弱の小型案件であった
(2)ベンチャーキャピタルの保有比率が低い案件であった
(3)市場の関心の高い分野を手掛ける銘柄であった
(4)IPO市況が好調であった

吸収金額やベンチャーキャピタルの保有比率といった需給面での条件が整っていたことに加え、「AI」という市場のキーワードのど真ん中にいる事業に大きな関心が集まったことも大きいだろう。

さらに、2018年は年初より10位のジェイテックコーポレーション、9位のMマート、7位のビープラッツ、3位のアジャイルメディア・ネットワークと初値高騰案件が多く、IPO市況が活況であったことも要因と言えるだろう。

 

IPO初値騰落率における上位10銘柄に見られる4つの共通点

過去3年間のIPO初値騰落率上位10銘柄を比べ、高騰するIPOの共通点を見ていこう。主に以下の4点が挙げられる。

市場からの吸収金額が少ない案件であること

初値が高騰するIPOの特徴として、市場からの吸収金額が少ない小規模案件であることが挙げられる。一般的に吸収金額が10億円未満の案件が小規模案件として分類されるが、上位10銘柄のうち10位のジェイテックコーポレーションを除く9社がこの条件に当てはまる。吸収金額の少ない案件は、需給面で大きなプラス材料となる。

ベンチャーキャピタルの保有比率が低い案件であること

ベンチャーキャピタルの保有比率が低いことも、初値が高騰するIPOに共通する特徴だ。上位10銘柄のうち、3位のアジャイルメディア・ネットワークを除く9社がIPO時のベンチャーキャピタル保有比率が10%以下だった。

ベンチャーキャピタルは株式の売却で利益を出すことを目的としており、ベンチャーキャピタルの保有比率が高い銘柄は、上場後に大きな売り圧力を抱えることになる。ベンチャーキャピタルの保有比率は、需給面に大きな影響を与えると言える。

事業内容が市場テーマに沿っており独自性が高い

企業の事業内容は、注目すべきポイントだ。その銘柄の事業内容が市場のテーマに沿っているか、また独自性のある事業内容であるかをチェックしたい。上位10銘柄を見ると、AI、仮想通貨、クラウドサービスなどの市場テーマにマッチした銘柄が多いことがわかる。なお、事業内容の独自性が薄い場合は、利益実績が重視される傾向がある。

マザーズ銘柄は人気化しやすい

上位10銘柄のうち、8銘柄がマザーズ上場銘柄である。対象を上位50銘柄に広げても、マザーズ銘柄が43銘柄、ジャスダック銘柄が7銘柄だ。近年はマザーズ上場銘柄に個人投資家の買いが殺到するため、マザーズ銘柄という事実自体が初値上昇材料となっている状況だ。

このように、高騰するIPOにはいくつかの特徴がある。もちろん投資の世界に絶対はないので、この条件を満たしている銘柄が必ず上昇するわけではないが、このような銘柄に初値高騰の期待がかかることも事実である。

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松本雄一
執筆・松本雄一
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。

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