すでに英国内の議員、市民団体などがイスラエルへの武器輸出に懸念を示すようになっており、労働党政権が一歩踏み込んだ動きをしたと言えるでしょう。

輸出停止の声

武器輸出を停止するよう、英国内で強い声が上がったのが、今年春でした。

4月1日、包囲状態となって物資の欠乏に苦しむガザ地区のパレスチナ住民のため、食料支援を行っていた慈善組織「ワールド・セントラル・キッチン」(WCK)の職員7人がイスラエル国防軍(IDF)の空爆によって亡くなりました。そのうちの3人が英国人だったため、紛争の悲惨さがより一層印象付けられました。

セントラル・キッチンによると、100トンにも上る食料関連の物資を降ろしたトラック集団が動き出したときに攻撃を受けたそうです。

トラックの行程はIDFとの調整の上で策定されていたものです。人道支援の活動であり、IDFの承諾の下に移動していたのに攻撃を受け、英国人を含む職員らが殺害されてしまったのです。

英国はイスラエルに武器を輸出していますので、英国製の武器で英国人が殺害された可能性もあります。割り切れない思いがするのは遺族だけではないでしょう。

もっとはっきり言うと、今までは平気だったのに自国民が殺害されたかもしれないとなると、急に問題が身近に感じられたということですね。

イスラエルには独立国家として国を防衛する権利はあるものの、パレスチナ人市民の犠牲者数が増えるにつれて、軍事攻撃を一時的にせよ停止するべきという声が国際社会で広がってきました。 セントラル・キッチン職員の犠牲をきっかけに、英政府に対してイスラエルへの武器売却を停止するよう求める圧力がより強まりました。

すでに議員らの一部は政府に武器輸出の停止あるいは保留を求めていましたが、4月3日には、600人を超える司法関係者や学者などが(当時の)リシ・スナク首相(保守党)に公開書簡を送り、恒常的な停戦のために政府が尽力することやイスラエルへの武器輸出の停止などを訴えています。

武器輸出停止の議員らの書簡