もちろん、カナダの人が全員、コンピューターに精通しているわけではないので代替手段はいくつか用意されています。ただ、政府も時間をかけながらも少しずつ自動化の度合いを進める状況です。2024年のネットによるファイル率はカナダ国税によると92.5%です。大したレベルです。

如何でしょうか?仕組みとしては非常によくできていると思いませんか?河野氏はこれを実現させたいのです。ただ、アメリカにしろカナダにしろ、全員確定申告というベースが何十年にもわたって築かれてきた中で進化したものです。これと同等のモノを数年で実現させるのは日本では難しいと思います。

ただ、デジタル化の波は止まらないので2世代ぐらいかけて徐々にその仕組みを浸透させていくしかないと思います。つまり、今の50代以下の人たちが少しずつ受け入れるような仕組みを作る、その間、今の確定申告との併用です。20年後に全員確定申告という目標設定でいいんじゃないでしょうか?

一部の方は自分の損益が税務署にもろばれするのを嫌がる人もいるでしょう。気持ちはわかりますが、もうそんな時代でもないのです。現金を裏庭のツボの中に隠すような姑息な話と同じです。そして税務署は進化しています。税務署との格闘といいますが、多くは払わねばならぬものを払わないように細工したのがバレるというケースが大半だと思います。課税強化は世界共通でデジタル化が進めば本当に難しくなってきたと思います。まさに「化かし合い」ですが、もうそんなに抜け道はないと思います。

数年前、日本の税務界の大御所と話をしたとき、彼女が「税金で逃れるのは近い将来絶対に不可能になります。仮に今年や来年、うまく逃れても死ぬときには全部持っていかれるだけの話です」という言葉は超インパクトがありました。

河野さんの年末調整を止めようという発想は第一歩を踏み出すという点では評価できるし、ご本人も数年でできるとは思っていないはずです。でもそのような長い目標が日本には必要なのでしょう。