というのも、グンタイアリはあらゆる獲物に集団で襲いかかる獰猛な習性の持ち主であり、そのターゲットとしてはクモも例外ではありません。
ところがザマニ氏によると「グンタイアリはタランチュラの大人も子供も無視し、タランチュラが食べ残した残骸だけを集めて去っていく傾向があった」のです。
これは巣穴を清潔に保つことにも有益であるため、タランチュラにとってグンタイアリは便利な掃除屋となっていました。
グンタイアリは大柄なクモもバンバン捕食するため、この行動は実に不可思議だったとザマニ氏は話します。
流石のグンタイアリもタランチュラには怖気付いているということなのでしょうか?
しかしチームが観察を続けてみると、グンタイアリの中にはわずかながらタランチュラに噛み付いて攻撃を仕掛けている個体もいました。
ところがそのとき、タランチュラの全身が硬い剛毛で守られていたため、アリは皮膚に噛み付くことができず、あきらめて帰っていったのです。
この観察からザマニ氏らは「タランチュラの剛毛は掃除係のグンタイアリに齧られないために発達したのではないか」との新説に至ったのです。
つまり、グンタイアリは「タランチュラが怖いから攻撃しない」または「残飯を提供してくれる共生関係があるから攻撃しない」のではなく、「毛が邪魔で食べれないから残飯だけ頂いて帰ろう」と考えている可能性を示唆しています。
実際にタランチュラは大人だけでなく、子供も毛が生えていますし、さらには卵嚢(らんのう)までも毛で覆われていることがわかっています。
そのためにグンタイアリはタランチュラを敵に回すのではなく、共生相手として友好的に暮らすことを選んだのでしょう。
(※ タランチュラの子供たちの実際の画像はこちらから。かなり刺激的ですので、虫が苦手な方は閲覧をお控えください)