ボクサーやアメフト選手は、絶えず頭部に衝撃が加わるため、脳損傷のリスクを抱えながら戦っています。
実際、脳損傷が原因で亡くなったり、引退後に麻痺や認知障害を患ったりする人もいるようです。
では、頭突きで戦う動物たちは、同じようなリスクを抱えながら戦っているのでしょうか?
この疑問に答えるため、アメリカ・マウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)に所属する神経科学者ニコール・アッカーマンズ氏ら研究チームは、ジャコウウシ(学名:Ovibos moschatus)とビックホーン(学名:Ovis canadensis)の脳を直接検証しました。
研究の詳細は、2022年5月17日付の学術誌『Acta Neuropathologica』に掲載されています。
目次
- 頭突きする動物は脳損傷から守られているのか?
- 頭突きする動物の脳はやっぱり損傷していた
頭突きする動物は脳損傷から守られているのか?
「外傷性脳損傷(略称:TBI)」は、頭部に衝撃が加わることで起こる脳損傷です。
重症な場合は、認知機能や人格に大きな変化が生じたり、身体が麻痺したりします。
また軽度の外傷性脳損傷を繰り返し受けることで、数年たった後に認知症のような症状の「慢性外傷性脳症(略称:CTE)」を発症する場合もあります。
私たちヒトは、交通事故や過激なスポーツ(ボクシング・アメフト・アイスホッケーなど)によって、これらを患うことが多いと言われています。
ところが「頭突きで戦う動物たちは脳に損傷を負わない」という通説があります。
例えばジャコウウシは、オス同士が頭突きしながら角を突き合わせて激しく争います。
突進時の速度は時速50km以上になることもあるのだとか。