SIPストアに活路

 では、ヨーカ堂の今後、どのように生き残っていくのか。

「不採算店舗などを一気に閉鎖するため、収益が改善して黒字に転換するのは確実でしょう。その上で、スーパーとコンビニの中間的な店舗、ミニスーパー的なSIPストアに注力していくと考えられます。SIPストアの代表格であり成功例といえるのがイオングループの『まいばすけっと』ですが、ヨーカ堂は『まいばすけっと』より大きめの店舗で品揃えをより充実させた店舗を構想しているようです。『まいばすけっと』の成功により、徒歩で手軽に行けるミニスーパー型店舗のニーズが高いことはすでに実証されていますが、ヨーカ堂のSIPストアの成否のカギを握るのが、セブン&アイ・グループとしてヨーカ堂の持つ生鮮食品のノウハウとセブン-イレブンが持つコンビニ経営のノウハウをどこまで掛け合わせて相乗効果を生めるかという点でしょう。

 人件費の高騰や人手不足が今後ますます深刻化し、バックヤードの調理場をはじめ大勢の従業員を必要とする従来型のスーパーマーケットの経営は非常に苦しくなると予想されます。一方、セブン&アイ・グループはすでに食品製造・加工拠点やセントラルキッチンを持ち、豊富な資金力を背景にそうしたインフラを新設し、さらにはバックヤードを持たないSIPストアを大量に出店できる余裕があるという点も強みになってきます。

 スーパー事業の存在がセブン&アイ・グループの重荷になっているという指摘がなされることもありますが、たとえばセブン‐イレブンで展開されている『セブンプレミアム』などのプライベートブランド(PB)の食品には、グループ企業ヨークベニマルのノウハウが投入されており、スーパー事業はグループにとってなくてはならない存在です。また、グループ各社の店舗・事業オペレーションにはグループ会社のヨークベニマルのノウハウが活用されており、同社はヨーカ堂の再建にも深く関与するなど、グループ一体経営がセブン&アイの強みでもあります。SIPストア事業というスーパーとコンビニの機能を融合した業態の実現が、セブン&アイ国内事業を再び成長させる起死回生の一策となりえます。今後数年間でグループとしてどのような取り組みをしていくのかが注目されます」(中井氏)

(文=Business Journal編集部、協力=中井彰人/流通アナリスト)

提供元・Business Journal

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