商社業界のなかでの人材獲得競争

 転職支援サービス会社社員はいう。

「日本企業の場合、たとえば大手メーカーでも極めて業績が良い一部の自動車・半導体製造装置・機械系の企業などを除けば、年収はそれほど高くはなく、1000万円を超えるのは一部の管理職クラスだけ。高給というイメージが強いメガバンクも支店長クラスで1500万円くらい。一方、外資系投資銀行だと新卒1年目で1000万円、30代まで残ることができれば2000万円を超えてきて、あとは実力と出世次第で3000~4000万円もみえてくるが、生存競争は極めて激しい。外資系コンサルティング会社もコンサル職であれば、投資銀行ほどではないが、それなりに高い。

 そう考えると、今の4大総合商社の年収水準は、日本国内に限っていえば、かなり特殊な状況になっている。現在では金融やITでも高いスキルを持つ人材に数千万円の報酬を提示することが増えており、そうした他業種に人材を“採り負けない”ことを意識している面はあるだろうが、やはり優秀な人材を同業の競合他社に取られないようにするという、商社業界のなかでの人材獲得競争という側面が、各社の給与引き上げ競争を招いているのではないか」

 また、総合商社社員はいう。

「月の給料は他の日本の大企業と比べて『すごく高い』というレベルではなく、年収でみると月の給料よりボーナスのほうが多い。会社が『頑張って利益が出れば収入が増えますよ』というかたちでインセンティブの要素を多くしているためで、もし仮に業績が悪化して赤字に陥ったりすれば、ボーナス部分が激減するので年収も減ることになる」(6月6日付当サイト記事より)