総合商社の伊藤忠商事が、2025年度の社員の平均年収を24年度見込みから10%程度引き上げる方針であることがわかった。24年度の純利益の計画値8800億円が達成できた場合、成績最優秀者の年収は「BAND6(部長)」が4110万円、役職がない「GRADE3(担当者)」でも2500万円となる。一部SNS上では「医師たちが『俺も総合商社に行けばよかった』とか言ってる」「最上位社畜たちの椅子取りゲームをナメるな」など、総合商社と同じく激務かつ高年収とされる医師の待遇と比較する声や、仕事のキツさや出世競争の激しさゆえに安易に憧れるのは禁物だといった声もみられる。伊藤忠商事の社員の実態とは。そして、仕事の大変さを勘案するとこの年収水準は妥当といえるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 4大総合商社の一角を占める伊藤忠商事は、財閥系の三井物産・三菱商事・住友商事に対し、非財閥系と称され、財閥グループの力を頼れないなか独立独歩で業績を拡大。その積極果敢な社風から「野武士集団」ともいわれてきた。業績的には長きにわたり三井物産と三菱商事の後塵を拝してきたが、16年3月期に最終利益ベースで初めて業界1位に浮上。以降、三井物産、三菱商事と毎年、首位争いを演じている。

 伊藤忠商事の事業構成としては、総合商社にとっては従来型ビジネスとされる資源には重きを置かない一方、IT・食品・繊維・小売り・生活資材など一般消費者に近い領域に強みを持ち、業界内では異色の存在とされる。

「日本経済界でも突出した高給になります」

 その伊藤忠をめぐって、少し前から一部SNS上で話題となっていたのが、社内から流出したとされる、岡藤正広会長CEO名で書かれた「年収水準見直しについて」と題する社内文書だ。「来期以降の処遇を大きく改善し財閥系商社に負けない水準の制度に改訂する」「財閥系商社との格差を埋めることを優先」と書かれた文書によれば、24年度の純利益の計画値8800億円が達成できた場合、25年度の年収は24年度比、総平均で10%上昇するといい、「三菱商事及び住友商事と同じ業績を達成した場合には、両者と同水準となります」としている。

 改定後の成績優秀者の年収は、「BAND6(部長)」が4110万円、「BAND5(課長)」が3620万円、「BAND4(課長代行)」が2970万円、「GRADE3(担当者)」が2500万円となる。文書内には「日本経済界でも突出した高給になります」とも書かれており、同社はメディア各社の取材に対して同社が作成した資料であることを認めている。

 三菱商事の今年夏の平均賞与支給額が641万円にも上ることが話題を呼んだが、総合商社の給与水準は高い。4大商社の23年度の平均年間給与は、有価証券報告書によれば軒並み1700万円を超えている。