また、インボイス制度や電子帳簿保存法はさらにこの上を行く愚策であることは明らかだ。人員の厳しい中小企業やフリーランスの個人事業主にとって、この制度は書類作成や管理に膨大な時間と労力を必要とする。いや、税務に関わらない部門も影響を受ける。会社から「取引先はインボイス対応の企業を使え」と指示が出ても、買い物や打ち合わせ、飲み会に使う飲食店のインボイス対応可否の確認にムダな時間を使わせている。さらに電子帳簿保存法は運用における細目ルールがコロコロ変更になり、プロの税理士や税務調査官すらも一体、何が正しいかわからない状態に陥っている人もいるという話を聞く。
現在進行系で関係スタッフを疲弊させ、ムダな時間を使わせている状態である。政策を打ち出すたびにドンドン複雑で手間になっていくのは、愚策ではないだろうか。
異常なほど難しい税金日本人の労働生産性を大きく落とす要素はDX化の遅れや、労務に関わる部分であるが、その他にも税金計算も決して無視できないと思っている。我が国の税金は複雑怪奇で、玉虫色の解釈が可能な状態で放置されておりプロでも判断に迷ったり意見が分かれるものである。
納税は国民の義務であり、確定申告を始めすべての人に関係するものなのでできるだけシンプルであるべきだ。日本の税金ややこしいというのは個人の感想ではない。190カ国を対象とした世界銀行が実施した「ビジネス環境ランキング」によると「納税環境」は97位(2019年)で、全評価項目のうちで最も低い(資料)。これは税負担以上に、申告納税にかかる様々な手間が煩雑なプロセスであることを示している。
国が国民に求める手続きが煩雑であればあるほど、それにかかる時間と労力は無駄に消費される。税務署も脆弱な税インフラの犠牲者の一人であり、彼らもまた複雑なシステムの管理に追われている。
タクシー規制問題は税務だけではない。タクシー産業を守るための規制もまた、国民の時間を奪う政策の一例である。