また認知機能に加えて身体機能が低下すると、物理的な行動範囲が限定され、社会的な交流範囲が狭まってしまいます。

細胞レベルでは、ニューロン間の接続を担うドーパミン、セロトニン、アセチルコリンなどの神経伝達物質のレベルが変化することが知られています。

これらの化学物質は、気分や動機付けにおいて重要であり、そのバランスが崩れることで行動面での変化が起こるとされています。

また加齢はシナプスの可塑性を低下させ、新しい情報の習得を困難にします。

こう書くと、年齢を重ねることに恐怖を感じる人もいるでしょう。

そのため最後に興味深い研究結果を紹介します。

この研究は年齢と幸福度の関係が調査したものとなっています。

加齢による行動変化の話を聞いた直後では、幸福度も老化と一緒に増加していくと思うでしょう。

しかし実際に調査を行ってみると、最も幸福度が低いのは30代前後の比較的若い時期であり、全体的な幸福度は幼年期と老齢期が最も高いことが示されました。

つまり人間の幸福度は年齢に対してU字型をとっていたわけです。

もしかしたら、自分のお気に入りの場所で自分と気が合う長年の親友と過ごすことになる加齢による行動変化には、老齢期の幸福を増加させる効果があるのかもしれません。

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参考文献

Like people, vultures get set in their ways and have fewer friends as they age
https://newsroom.ucla.edu/releases/vultures-age-get-set-in-ways-fewer-friends-like-people

元論文

Behavioral plasticity shapes population aging patterns in a long-lived avian scavenger
https://doi.org/10.1073/pnas.2407298121