そして追加実験で、モルヒネ・アンサンブルを人為的に不活性化したところ、モルヒネを打っているのにマウスの鎮痛作用が完全に消失することがわかりました。
ところが逆に、モルヒネ・アンサンブルの活性化を人為的に促した結果、実際にモルヒネを投与しなくても、同じ鎮痛作用が再現されたことが確認できたのです。
まさにモルヒネ・アンサンブルは活性化の有無に応じて、鎮痛作用をONかOFFにするスイッチのように働いていました。
この結果はモルヒネの鎮痛作用を安全に得る方法を確立する上で、非常に貴重な情報となるでしょう。
人為的な方法で鎮痛作用を再現できるのであれば、実際にモルヒネを投与せず、中毒症状や副作用も伴わない治療が可能になるかもしれません。
その一方で、今回の研究結果はまだマウスでのみ得られたものであり、同じ神経メカニズムがヒトでも再現できるかどうかは不明です。
それにはヒトを対象とした更なる研究が必要となるでしょう。
その前にチームは次のステップとして、本研究の成果を土台に、モルヒネの長期的な使用により鎮痛作用が徐々に弱まっていく理由を解明する予定とのことです。
モルヒネの発見から200年以上が経ち、ようやく鎮痛作用の発生に関わる脳領域が特定できました。
この知見を発展させることで、モルヒネのマイナス面を除去した革新的な治療法の発明が期待されます。
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参考文献
Mechanisms of how morphine relieves pain mapped out
https://news.ki.se/mechanisms-of-how-morphine-relieves-pain-mapped-out
元論文
Morphine-responsive neurons that regulate mechanical antinociception
https://www.science.org/doi/10.1126/science.ado6593