戦争映画を観ていると、負傷兵に対してよく「モルヒネ」を打つシーンが出てきますよね。

モルヒネには痛みを緩和する強力な鎮痛作用があり、深い傷を負った兵士が痛みによるショック死を避けるには最適です。

もちろんモルヒネは映画だけでなく、世界中の医療現場でも多用されています。

その一方で、モルヒネには中毒性や副作用がある上に、痛みを消す神経メカニズムがいまだ不明な点で懸念される薬剤でもありました。

しかし今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)はついに、モルヒネが鎮痛作用を起こす神経メカニズムを解明したと発表しました。

この知見は依存症や副作用を起こさないモルヒネの使い方を見つける上で役に立つと期待されています。

研究の詳細は2024年8月30日付で科学雑誌『Science』に掲載されました。

目次

  • モルヒネはいつ誰が発見したのか?
  • モルヒネによる「鎮痛スイッチ」を発見!

モルヒネはいつ誰が発見したのか?

モルヒネはケシ植物を原料とするオピオイド鎮痛薬(※)です。

(※ オピオイドとは、ケシ植物から抽出された有機化合物やそこから合成された化合物で、鎮痛作用を持つ薬剤のこと)

その歴史的な発見は1804年にまで遡ります。

ドイツの薬剤師であったフリードリヒ・ゼルチュルナー(1783〜1841)という人物が世界で初めて、アヘン(ケシの実から採取される果汁を乾燥させたもの)からモルヒネ成分の単離に成功したのです。

ゼルチュルナーは、この薬が「夢のように痛みを取り除いてくれる」ことから、ギリシア神話のケシの花に囲まれて眠る夢の神モルペウスにちなんで「モルフィウム (morphium)」と名づけました。

(ケシの果汁に痛みを取り除いたり、精神を落ち着ける作用があることは古代エジプトの時代から知られていたと言われる)

そこから英語の「モルヒネ(morphine)」へと変わっていったのです。

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Credit: ja.wikipedia, ja.wikipedia