加えて、それぞれのマーモセットに一連のフィーコールを聴かせた結果、彼らは自分に充てられたネーミング(フィーコール)をちゃんと理解して、反応していることがわかったのです。
例えば、マーモセットAに「B」のフィーコールを聴かせても反応しませんでしたが、「A」のフィーコールを聴かせると敏感に反応し、鳴き声を返していました。
要するに彼らは自分が「太郎」なのか「花子」なのかを理解していたわけです。
さらに興味深いことに、同じ家族内のマーモセットは柵の向こう側にいるマーモセットに対し、同じフィーコールを使うことも特定されました。
これも実に驚くべき結果でした。
わかりやすく例えるなら、田中さん一家の親子供であれば、近所の鈴木さんを全員が同じように「鈴木さん」と呼びかけているということです。
これはつまり、ネーミングの仕方が親子間で学習されている可能性が高いことを示唆しています。
ネーミングはなぜ進化した?
研究主任の一人であるデヴィッド・オメル(David Omer)氏は「私たちの発見はマーモセットの社会的コミュニケーションが予想以上に複雑であることを浮き彫りにしている」と指摘。
「フィーコールはこれまで考えられていたような自己局在化(=自分の位置を知らせること)のためだけに使われているのではありません。
マーモセットたちは特定の仲間に固定のラベルを付けて呼びかけていたのです」と続けました。
要するに、彼らのフィーコールは「ボクはここにいるよ!」と知らせるためだけでなく、「お〜い、太郎どこ?」と特定の相手を呼ぶためにも使われていたのです。
この能力が進化した理由についてオメル氏らは「視界が遮られることの多い熱帯雨林の密集した木々の中で、仲間同士のつながり維持するために進化したのでしょう」と述べています。
また研究者らはこの結果を受けて、人間の発話言語がどのように進化してきたかについても新しい洞察を提供すると考えています。