南アフリカがバシール大統領を逮捕しなかったときには、他の加盟国からの批判に直面して、南アフリカはICCから脱退すると表明した。いくつかのアフリカ諸国も追随する意図を示唆した。
説得が功を奏して、結果的に脱退をしたアフリカの国はブルンジだけにとどまったが、ICCにとっては大きな危機であった。アフリカ諸国が脱退してしまったら、ICCに残るのは、ほぼ欧州諸国と、欧州人の末裔が政権を担っているラテンアメリカ諸国だけになってしまう。日本や韓国の存在は、例外的である。
アフリカ諸国脱退問題以降、ICCは加盟国の維持に細心の注意を払っている。モンゴルが脱退したら、アジアでの新規加盟は望めない。日本にICC事務所などを作っても、何もできない日本の納税者の趣味あるいは浪費だ、ということで終わる。
今回は、欧州のICC加盟国は、かつてほど強い態度を、モンゴルに対して見競ることはできないのではないかと思う。、あるいは、そうすべきではない。
第三に、ウクライナが先走り過ぎている。ウクライナ外務省報道官が、「テレグラム」に、「ICCと刑法制度に対する大きな打撃だ」と投稿した。「モンゴルは犯罪者が法の裁きを逃れることを許したため、戦争犯罪の責任を共有している」とし、「同盟国と協力しモンゴルの責任を追及する」と述べていると報道されている。
少し前に、マリの反政府勢力に支援をしている、とウクライナ関係者が述べたことから、マリ、ニジェール、ブルキナファソが、ウクライナと関係断絶をしたうえで、国連安全保障理事会に問題提起する、という事件が起こった。
プーチン大統領が戦争犯罪の容疑者であるということは、ロシアと関係を持つ者全てが犯罪者であることを意味しない。ましてウクライナが常に正しいことを意味しない。そのことをウクライナは理解していないのではないか、という疑惑が世界に広がっている。
確かにウクライナは、プーチン大統領の訴追理由になっている犯罪行為の当事国である。しかしまだ、ICC加盟国ではない。今までは、管轄権の受け入れ声明、という例外的なやり方で、ICCの捜査を招き入れていた。しかし自国兵士の訴追の可能性を懸念する国内の右派勢力に配慮して、ICCへの正式な加盟は、見送り続けていた。