我々が気軽に利用しているホ方式のeKYCは、実は極めて不安定な土台にある仕組みということが分かります。
写真の漏洩も発生
さて、そんなホ方式の券面・セルフィー写真はどのように管理されているのでしょうか?
「企業によって差はありますが、これらの写真は基本的には金融機関にeKYCを提供している企業のサーバーにアップロードされます」
しかし、eKYCを提供する企業から顧客の写真が漏洩する不安も否めません。これについて日下氏は、
「日本でも海外でも、実際に写真情報が漏洩したことはあります」
といいます。
「なぜ情報が漏洩するかというと、結局は人間が管理しなければならないからです。その会社の正社員ならともかく臨時雇いのアルバイトで、この写真情報を24時間365日管理するスタッフが、つい出来心で500人分の顧客情報を外部へ提供してしまった……ということが海外で実際に起きています。
もちろん、それを防ぐためにスタッフの入退室管理システムなどを導入するのですが、それでも漏洩のリスクは常につきまといます」
マイナンバーカードは「カウンターテクノロジー」
その上で日下氏は、「マイナンバーカードはディープフェイクに対抗するテクノロジーが詰まっている」と解説します。
「AIは、悪意を持った者に渡ると悪用されます。これは火や刃物も同様です。火に対する火災警報器や消火器、刃物に対する防刃手袋や防刃チョッキのように、マイナンバーカードはAIに対するカウンターテクノロジーと言えます」
マイナンバーカードの券面を偽造したものが製造・流通しているにもかかわらず、なぜ「マイナンバーカードはAIに対するカウンターテクノロジー」と言えるのか。
後編では「マイナンバーカードを使ったワ方式のeKYC」について、日下氏に伺います。