あえてシエラを選ぶ理由を探すほうが難しい?

 ジムニーとジムニー シエラ、どちらが買いといえるのか。

「両者を比較する人は少なくないでしょう。角張ったボクシーなスタイルと、ラダーフレーム構造に良く動く足回りをマッチさせた機能性の高さは、いずれも甲乙つけがたい優れたものがありますが、経済性やバランスの良さで軽自動車のジムニーを推す人が多い傾向にあると思われます。比較した場合、皮肉なことに軽自動車のほうが劣ってそうな面において、むしろジムニーの良さが際立ってしまったり、想像よりも軽自動車で十分だと思わせてしまう、ジムニーのポテンシャルの高さがクローズアップされがちです。

 例えば、エンジンひとつをとってみても、3気筒660ccで64psのジムニーと4気筒1500ccで102psのシエラだと、圧倒的に後者のほうがパワーでも静粛性でも優れていそうに思われますが、実際に乗り比べてみると圧倒的なアドバンテージをシエラには感じにくかったり、メカニカルノイズも排気量を鑑みた時に、シエラをあえて選ぶ理由にはなりにくいレベルです。

 また、室内の広さや使い勝手についても、シエラの優位性は見当たりません。室内長、室内幅、室内高は、実はどちらも共通のサイズであり、シエラが小型乗用車だからといって圧倒的に広いわけでもなく、静かだというわけでもありません。

 一方で、軽自動車であるジムニーより悪い面が目立ってしまうシエラは、そもそも海外向けに作られているのだから仕方がない、という意見も多く聞かれます。ジムニーという車種の素性は、昔ながらの本格的なクロスカントリー4WDなので、頑丈なはしご型のラダーフレームにサスペンションを取り付け、その上にボディを載せるという伝統的な車体構造で、現代の主流であるモノコックボディと比べると、独立した車体構造ゆえ剛性が高い半面、ボディと足回りがバラバラに動くことで上体がユッサユッサと揺れるような挙動を感じてしまいます。

 これが、乗り心地が悪いとされる大きな要因だと考えられますが、こうしたデメリットの部分はジムニーよりもシエラのほうが際立ってしまいがちです。前後の車軸を結ぶ距離=ホイールベースの数値は、まったく同じ2250mmですが、左右の車輪の距離=トレッドはシエラのほうが広く、安定感があり凸凹道での左右の揺れは感じにくいはずです。しかし日本でのマーケティングを優先したジムニーと違い、海外での販売を重視したシエラは足回りが高速走行向けのセッティングであるため、日本国内の一般道を走るようなシーンでは段差で跳ねるような動きをしたり、大きな揺れを感じやすい傾向にあります。

 総合的に比較検討すると、あらゆる面でジムニーに軍配が上がり、最終的にはアフターパーツの豊富さや、維持費の安さなども含め、あえてシエラを選ぶ理由を探すほうが難しいという人が少なくないのでしょう」(桑野氏)