低価格で小回りが利くとして日本の消費者に重宝されている軽自動車。なかでも根強い人気を誇るスズキ「ジムニー」や、その兄弟車で登録車の「ジムニー シエラ」を購入したところ、乗り心地が悪くて後悔したという評判も一部で聞かれる。果たして軽自動車には“安かろう・悪かろう”という側面はあるのか。また、スズキの車の購入を検討する際には注意すべき点などはあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 日本独特のジャンルである軽自動車の規格は道路運送車両法によって定められており、全長 3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下、排気量660cc以下となっている。SUVやステーションワゴン、セダンなど他のタイプと比べると室内空間が狭く走行性能が劣るものの、道や駐車スペースが狭い日本では小回りが利くとして好まれる傾向がある。さらに本体価格や自動車税などの維持費が安い点も魅力の一つだ。

 今年1~6月のブランド通称名別新車販売台数ランキング(日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会の発表による)では、乗用車・軽自動車あわせた総合順位でホンダ「N-BOX」が1位、スズキ「スペーシア」が3位、スズキ「ハスラー」が7位と上位に食い込んでいる。

日本市場のニーズを研究し尽くしたジムニー

 そんな軽自動車のメーカー別新車販売シェア1位(2023年度)であり、軽自動車の代名詞といえるスズキ車。その特徴とは何か。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。

「スズキというブランドの特徴を簡潔に語るなら、日本の軽自動車市場における高いシェアと人気車種を生み出してきたプロダクト力に尽きると思われます。独自のアイデアとパッケージングで、時代をリードするコンパクトかつ経済的な軽自動車を、常に市場へ送り出してきたメーカーであり、また四輪駆動車のジャンルにおいて常に強い存在感を示してきたという歴史もあります。インドや東南アジアなどのグローバル展開でも成功を収め、革新的な技術と高い信頼性は世界的に認められています。ジムニーはそのスズキを象徴するアイコン的な存在であり、日本市場のニーズを研究し尽くした軽自動車のジムニーと、世界市場のニーズを高い次元で形にしたジムニー シエラは、それぞれの持ち味と存在意義があるといえるのではないでしょうか」

 スズキの「スペーシア」「ハスラー」「ワゴンR」「アルト」と並んで人気の「ジムニー」、そして「ジムニー」の登録車版である「ジムニー シエラ」をめぐり、乗り心地が悪いという評判が一部で聞かれる。

 1970年に初代が発売されたジムニーの特徴は、堅牢性を漂わせる箱型ボディやリヤボディに装着されたスペアタイヤに象徴されるオフロード車である点。現行の4代目は全長3395mm、全幅1475mm、全高1725mmというサイズで、悪路でも車体の底面やバンパーがぶつからないように最低地上高は205mmに設定。3ドアタイプの大人4人乗りで、FRレイアウトと機械式副変速機付きパートタイム4WDを採用し、5速MTと4速ATがラインナップ。アウトドア好きや険しい道を走行する機会が多いユーザ向きとされる。

 ジムニーの兄弟車として1993年に発売されたのがジムニー シエラだ。軽自動車ではなく登録車扱いの規格となっており、現行モデルは小型エンジンの直列4気筒1.5L NAエンジンを搭載している。

 メーカー希望小売価格(税込み)はジムニーが165万4000~200万2000円、ジムニーシエラが196万2400~218万3500円。納期はともに約1年ほどとなっており、人気の高さがうかがえる。