ショルツ政権は「アフガン出身の不法移民の強制送還は今年6月ごろから慎重に準備されてきた。突発的な決定ではない」と弁明しているが、ドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州のゾーリンゲン市(人口約16万人)で先月23日夜、市創設650年祭の開催中、ナイフを持った容疑者が祭に集まった人々を襲撃し、3人を殺害(67歳と56歳の男性、および56歳の女性)し、8人に負傷を負わせるという殺傷事件が起きた直後で、移民問題が大きなテーマとなっている時だ。特に、ゾーリンゲン事件の容疑者は26歳で、シリアのデイル・アルゾール出身、2022年12月末にドイツに来て、ビーレフェルトで亡命を申請したが、却下されたにもかかわらず、その後もドイツ国内に不法滞在していたことが明らかになったばかりだ。

ドイツのメディアでは「容疑者を難民申請却下直後、ダブリン協定に基づいて容疑者が欧州で最初に難民申請したブルガリアに強制送還するか、シリアに送還していたならば、3人のドイツ国民が殺害されることはなかった」という批判の声が聞かれる。

それだけではない。東独のザクセン州とテューリンゲン州で今月1日、州議会選挙が実施されたが、通称アンぺル政権と呼ばれる社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の移民政策への批判の声が強く、反移民政策を主張する極右「ドイツのための選択肢」(AfD)の飛躍の根拠ともなっている。

ドイツ連邦検察は、ゾーリンゲンのテロ事件を「イスラム過激派による犯行」と断言し、ショルツ政権は先月29日、イスラム過激派テロに対する防護策、違法移民対策、および銃規制の強化を目的とした新たな対策を発表した。この中には、ナイフ禁止区域の拡大、出国義務のある難民に対する給付金削減、治安当局に対する捜査権限の追加、イスラム過激派対策のための予防プロジェクトの増加が含まれている。今回、アフガンへの強制送還は不法移民への一種の対策パッケージというわけだ。