まず、経営者は年収を自由にコントロールできる。「利益=給料」に近い人もいれば、高額な利益を出しながら驚くほど低い給料に設定している人もいる。後者の場合、税金を意識していて、たとえば退職金として多く受け取ることで計画的な節税対策にしたり、家族への所得分散目的で資産管理会社を使うために自身への給与コントロールをする社長もいる。自分の年収は安くても、法人にプールする利益を含めれば実際にはお金持ちである。でもその事情は外野からは全く見えず、ブラックボックスである。
加えてサラリーマンは税引き後にお金を使えるが、社長は税引前に経費でお金を使った後に報酬を受け取る。そのため、年収が同じでも使える金額が社長とサラリーマンとでは全く異なる。極端なことをいえば、年収が安い社長が社有車のレクサスやベンツに乗り、社宅マンションに住んで豊かな生活をしているケースなんていくらでもある。
社長は途中からR>Gの世界へいくビジネスと資産運用を両方頑張っている社長が直面する現実が、気がつけば「R>G」の世界に身をおいているということだ。これは一体、どういうことか?
エイベックスの松浦氏はメディア記事の中で「社長時代に最も稼げたのは、一流アーティストをプロデュースしたことより、本社ビル売却という資産運用」だという。その額、驚きの300-400億円というからケタが違う。
規模感は違えど、こうした話はまったくめずらしくない。ビジネスで年収3000万、5000万を稼ぐ人も、所有する資産価格の高騰でその10倍、20倍で利益確定するというものだ。資産運用の場合、市況や運が強く影響するので、どこまでその人の実力の範疇に含めるかは判断が難しい。だが、ビジネスは途中から稼げなくなって失速する人が大多数の中、資産運用は現実で統計的に期待値が高い長期投資をすれば、いつの日か「R>G」の世界へお迎えがやってくることは期待できる。一生分、いや二生分、三生分もの資産があれば、もう年収の本来の意味が薄まり、お飾り程度でしかなくなってしまう。